新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」(奥)の
発射実験に臨む金正恩朝鮮労働党総書記(手前中央)
=3月24日、平壌(朝鮮中央通信=共同)
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国民の生命と世界の平和を守るために、岸田文雄首相には防衛費の思い切った増額へ舵(かじ)を切ってもらいたい。
国際社会を見渡せば、西ではロシアがウクライナを侵略している。東では中国が核戦力増強を急ぎ、台湾や尖閣諸島を狙い、南シナ海を支配しようとしている。
先進7カ国(G7)など、自由と民主主義、法の支配を重んじる国々は協力して、中露などの専制主義勢力から平和を守らなくてはならない。
東西冷戦終結後、各国が国防費の分野で応分の負担を果たすことが今ほど求められているときはない。ある国が防衛力を充実させれば、その分だけ同盟国、有志国の負担が減り、さまざまな脅威に備えられるからだ。
バイデン米政権は2023会計年度の国防予算を約101兆円とする方針だ。前年度比4%増で、過去最大規模となる。
米国防総省が発表した国家防衛戦略の概要は、中国を「最も重大な戦略的競争相手」とした。妥当な内容だが、今まで中国は「唯一の競争相手」だった。ロシアにも力を注がざるを得ない事情がある。バイデン大統領は演説で「世界は変わった」と述べ、国防費増額への理解を求めた。
これほどの国防費でも米国だけでは東西の脅威に対応できない。日本や欧州など同盟国の協力は欠かせない。
米国以外の北大西洋条約機構(NATO)加盟国は国防費の国内総生産(GDP)比2%の目標を掲げてきたが、達成してこなかった。だが、ウクライナ侵略を受けて、ドイツのショルツ首相は方針転換し、GDP比1・5%の国防費を2%超に増やすと表明した。今年の国防費に1000億ユーロ(約13兆円)を充てる。昨年は470億ユーロだった。
日本の防衛費は、令和3年度補正予算と4年度当初予算を合わせてもGDP比1・09%(約6兆円)にすぎない。どの国も台所事情が苦しい中で努力している。日本がNATO目標の半分程度の防衛費のままでは、対中、対北抑止への協力を呼び掛けても説得力がないのではないか。
岸田首相は国会や記者会見で「防衛力の抜本的な強化を考えていかねばならない」と繰り返し述べてきた。指導力を発揮して速やかに実現しなければならない。
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2022年4月3日付産経新聞【主張】を転載しています