外務・防衛閣僚協議の初会合に臨む(左から)
フィリピンのロレンザーナ国防相、ロクシン外相、林外相、岸防衛相
=4月9日午前、東京都内(代表撮影)
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日本とフィリピンが、初めての外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を開き、東・南シナ海情勢への「深刻な懸念」を表明し、緊張を高める行為に反対した。防衛協力の強化でも一致した。力による現状変更を図る中国の存在が念頭にある。
日比両国は共に海洋国家で、法の支配、自由、民主主義などの基本的価値を共有している。米国と同盟を結び、専制主義の大陸国家、中国の脅威への対応が安全保障上の重要課題となっている。
フィリピン周辺の海は日本の主要海上交通路(シーレーン)でもある。フィリピンが中国の影響下に置かれないことは日本の独立と繁栄にとって極めて大切だ。
2プラス2の共同声明は、防衛能力の構築や艦艇の寄港、防衛装備品の移転などにより、防衛関係全体の強化を謳(うた)った。共同訓練を念頭に、自衛隊とフィリピン軍の相互訪問の法的基盤となる「円滑化協定(RAA)」などの締結の検討開始も表明した。いずれも推進してもらいたい。
一方、米比両軍は8日まで、過去最大規模の共同演習を行った。日米両国はフィリピンと連携を深め、中国の南シナ海支配の動きを抑止したい。
ただし、不安材料はある。8日には、ドゥテルテ比大統領と中国の習近平国家主席が電話会談した。中国側の要請によるもので、習氏は米比の同盟強化を牽制(けんせい)し、「地域の平和と安定を共に守りたい」と呼びかけた。
中国は国際法を無視して南シナ海に人工島を造り、軍事基地化した。南シナ海の島々の領有権を主張するフィリピンやベトナムなどの権利を侵害している。フィリピンの排他的経済水域(EEZ)では海上民兵が乗った中国の「漁船」が徘徊(はいかい)している。
国際秩序を乱す張本人である習氏の呼びかけは、フィリピンに対して中国に従えと言うに等しく、笑止千万である。
だが、中国の軍事力と経済力は無視できず、フィリピン政府の腰は定まらない。米比演習や日比2プラス2と同時期に、習氏との首脳会談を受け入れたのもその表れだ。ドゥテルテ氏は南シナ海問題の棚上げを語ったこともある。
5月の大統領選でフィリピンには新しいリーダーが誕生する。日本政府は今後もフィリピンへの働きかけに力を入れるべきだ。
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2022年4月14日付産経新聞【主張】を転載しています