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ウクライナのゼレンスキー大統領が訪米し、バイデン大統領とホワイトハウスで会談した。ロシアが2月にウクライナに侵攻して以降、ゼレンスキー氏が外国を訪問するのは初めてだ。
ゼレンスキー氏が危険を冒して渡米したのは、長期化が必至なロシアとの戦いと、国民生活の実情を米国の政権や世論に直接訴えかけ、最大の「命綱」である米国からの十分な支援を確保することを目指すためだ。
バイデン氏はこれに応え、ゼレンスキー氏が繰り返し求めていた露軍のミサイルを迎撃するための地対空ミサイルシステム「パトリオット」の初供与を含む、総額18億5千万ドル(約2450億円)規模の軍事支援を伝えた。
ウクライナでは東部や南部で激戦が続く一方、露軍がベラルーシを経由して中部や西部に侵攻する構えも見せている。露軍はミサイル攻撃で電力インフラを破壊し、多くのウクライナ市民が凍死する事態も懸念される。この冬を越せるかどうかは、国の存亡に関わる一大事だ。
米国および国際社会は、他国の主権を侵害して自らの領土的野心を満たそうとするプーチン露大統領の横暴を阻止するため、ウクライナを力強く支え続けていかなくてはならない。
バイデン氏は会談後の共同記者会見で「ウクライナがある限り、私たちはウクライナとともにある」と強調した。国際社会による支援を主導する米国が揺るぎない連帯を打ち出したことは、大いに歓迎したい。
バイデン氏がこのタイミングでゼレンスキー氏を招いたのは、11月の中間選挙で下院の多数派を奪還した共和党が対ウクライナ支援を見直す構えを示していることを視野に置いたものだろう。
ゼレンスキー氏もこうした動きを意識し、会談後の上下両院合同会議での演説で「米国の資金は慈善行為ではなく、世界の安全と民主主義のための投資だ」と述べて満場の拍手を浴びた。米議会はこの呼びかけに応え、党派的な思惑に左右されることなくウクライナ支援に力を尽くしてほしい。
日本への期待も大きい。軍事的な支援には制約があるにしても、政府や民間が連携してできることは多いはずだ。一時避難民への支援拡大なども含めた、きめの細かい対応を目指したい。
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2022年12月23日付産経新聞【主張】を転載しています