Chinese flotilla at Whitsun Reef 003

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南シナ海の南沙諸島にある環礁付近に、海上民兵が乗っているとみられる中国漁船団が集結し、この環礁に建造物を造った。フィリピン軍が明らかにした。

 

場所は、パラワン島沖西方約320キロのウィットサン礁だ。フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内である。

 

中国は南沙諸島の環礁に人工島を7つも造り、領有権を唱えている。明らかな国際法違反だが、ウィットサン礁の建造物は8つ目の人工島造成につながりかねない。建造物も人工島も到底容認できない。中国は直ちに原状回復して立ち去るべきだ。

 

3月初旬に約220隻もの中国漁船団が同礁付近に集結した。船同士がぴったりと並んで停泊し、「海の長城」と呼ばれる異様さである。哨戒活動をしたフィリピン軍は同月30日に「違法な建造物」を見つけたと発表した。

 

フィリピンのロレンザーナ国防相は同月21日、「軍事拠点化という明確な挑発行為だ」と中国を非難し、撤収を求めた。フィリピン政府は海上民兵が乗船しているとみている。

 

中国政府は海上民兵がいることを否定し、荒天のため漁船が退避しただけだと反論した。だが、天候回復後も相当数の中国漁船が居座り続けたことや、構造物が現れたことから、中国の主張は偽りに満ちていることが分かる。

 

ハーグの仲裁裁判所は2016年7月、国連海洋法条約を踏まえ、南シナ海のほぼ全域に主権を有するとの中国の主張や人工島の造成は違法との裁定を下した。

 

満潮時に海面下に没する同礁のような暗礁は、国連海洋法条約上、領有権は生じない。いくら埋め立てて人工島を造っても、領土とは認められないのである。そのような人工島に中国は行政区域を設定し、滑走路など軍事拠点を設けている。軍事力を背景に国際法に基づく正当な秩序を崩すことは許されない。

 

指摘したいのは、南沙諸島での中国の挑発行為は日本や米国、国際社会にも向けられているという点だ。南シナ海は通商上も安全保障上も重要で、「自由で開かれた海」に戻す必要がある。中国政府はとりわけ、バイデン米政権の出方を見ている。中国のさらなる暴挙を抑止するためにも、日米両国はウィットサン礁での違法行為を看過してはならない。

 

 

2021年4月8日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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