climate change

A coal-fired power plant in Victoria, Australia, is pointed at in the IPCC report. It points out the problem of large emissions from fossil fuel facilities such as coal-fired power. Photo taken in August 2022. (© Getty via Kyodo)

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国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が地球温暖化に関する「第6次統合報告書」を公表した。

 

一昨年と昨年に公表された3つの作業部会の報告書を踏まえたもので、9年ぶりの作成だ。

 

IPCCの報告書は毎回、より強い調子で気候危機の接近を告げ、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス(GHG)の排出削減強化の必要性を示してきた。今回もその流れに沿った発表である。

 

温暖化防止の「パリ協定」は、産業革命前から今世紀末までの気温上昇幅を1・5度に抑えることを目指しているが、2020年の時点ですでに1・1度上昇していることに統合報告書は注意を喚起した。

 

日本は30年度にGHGの46%減(13年度比)という削減目標を表明し、世界各国も30年の自主目標を打ち出している。だが、統合報告書は温暖化抑制には不十分であると分析し、このままでは、今世紀中に許容幅の1・5度を超える可能性が高いと警告している。

 

「人間活動が主にGHGの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がなく」「継続的なGHGの排出は、さらなる地球温暖化をもたらし」「同時多発的なハザード(災害)が増大する」「住みやすく持続可能な将来を確保するための機会の窓が急速に閉じている」といった恐怖をあおる表現が数珠つなぎだ。

 

今回の報告書が世界の国々にGHG排出削減のさらなる積み増しを求める中で、日本は難しい対応を迫られる。先進7カ国首脳会議(G7サミット)の気候・エネルギー・環境大臣会合が4月に札幌で開催されるためである。

 

Junichiro Koizumi global warming
CO2の分離・回収試験を進めている大崎クールジェン=広島県

 

日本の30年度の電源構成目標は、その19%が石炭火力発電であるのに対し、ドイツなどは石炭火力の早期廃止を求めている。岸田文雄首相は脱石炭を至上とする動きに屈してはならない。資源に乏しい島国の日本にとって、原子力発電を含めたエネルギーの多様性確保は生命線だ。

 

減炭素能力を持つ日本の高効率石炭火力発電技術を大量排出国の中国やインドなどに移転すればGHGの削減に大きく寄与しよう。この点を強調すべきである。

 

京都議定書以来、日本は温暖化問題で国益を二の次にしてきた感がある。地球益と国益の両立を可能にする国際交渉力が必要だ。

 

 

2023年3月29日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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