Gold and silver slag Tuneishi etc.

From the left: Incinerator ash,calcined sand,calcined crushed sand, Arc Sand, gold and silver slag.3mm Arc Sand

(左から)焼却灰、焼成品、焼成粉砕品、アークサンド、金銀滓、3ミリのアークサンド

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リサイクル・産廃処理会社「ツネイシカムテックス」(広島県福山市)の埼玉工場は、一般家庭ゴミの焼却灰から金銀はじめ銅、鉄といった金属、アルミなども取り出し、売却してビジネスとするだけではなく、埋め立てとなる廃棄物を減量している。金、銀、白金などの希少金属は、市場価格に換算すると月に250万円~300万円になるという。灰自体は、人工砂「アークサンド(商品名)」として焼成して無害化、土木資材にして資源化し、SDGsを実践している。日本のリサイクル最先端の現場を報告する。

 

ツネイシカムテックス埼玉工場

 

 

金の重さを体感

 

「この入れ物を持ち上げてみてください」

 

東京の都心から車で約2時間。埼玉県寄居町にあるリサイクルに特化した産業団地の一角にあるツネイシカムテックス埼玉工場の一室で、部長で執行役員、桐山喜光(きりやま・よしみつ)氏は、濃い灰色の砂が入ったプラスチック製容器を差し出した。

 

 

入れ物は横10cm、縦8cm、高さ5cm。持つと、ズシッと重い。予想と異なったため、容器を載せた手が思わず、下がった。同じサイズの容器に入った人工砂(アークサンド)の約3倍の重さだった。

 

「金が入っているようには見えませんが、金銀が含まれています」と桐山さん。

 

同工場には、埼玉県内外の各市町村から、家庭で出される一般廃棄物の焼却灰が集められてくる。年間約10万トン。人工砂「アークサンド」に生まれ変わり、ブロック?や敷き砂などに利用されてきた。その過程で金、銀といった希少有価物を取り出すことに成功した。

 

比重が重い金銀滓

 

 

 

焼却灰が宝に

 

日本では、「都市鉱山」という言葉がある。大量に廃棄されるパソコンや携帯電話などの小型家電に使われているやプラチナやリチウムなどの有用な金属(レアメタル)の蓄積量は、世界の現有埋蔵量に対し金は約16%、銀は約22%、錫は約11%などと試算され(独立行政法人物質・材料研究機構)、その量は世界有数の資源国に匹敵することから生まれた言葉だ。 「東京2020オリンピックパラリンピック」で授与された金、銀、銅の入賞メダル約5000個は、小型家電リサイクル法に基づき回収されたパソコンや携帯電話などに使われているレアメタル(都市鉱山)で作られたことは、記憶に新しい。

 

 

一方、小型家電と同様、一般家庭ゴミの焼却灰の中にも貴金属が含まれていることは、大学などの調査研究ベースではわかっていたが、プラントで実際に日常的に取り出している事例はなかったという。

 

しかし、「欧州では、焼却灰の中から貴金属を回収している。日本でもきっと取り出せるはずだ」。ツネイシカムテックス会長の篠原幸一氏はその信念のもと、2016年、欧州を視察。翌17年、複数のメーカーを検討した結果、デンマークのリサイクル貴金属製造会社「Meldgaard Recycling A/S」の移動式のモバイル選別機エディカレントを導入した。

 

とはいえ、すぐに貴金属を取り出せるものではなかった。本社がある広島県福山工場で実験したが、欧州と違って金銀の回収には至らなかった。

 

埼玉工場の分析室

 

一方、 埼玉工場は「アークサンドに金銀が含まれているのではないか」というデータを得たことから2016年6月から、アークサンドの中でも重いアークサンドを取り出す選別機を工場に持ち込み、金銀の選別実験を続けてきた。

 

「細かくすれば、アークサンドの特性である吸水性のため。水を吸ってしまう。砂のサイズから、選別機の様々な条件を何度も変えて試行錯誤を続けました」と、同工場・分析室兼技術研究所課長代理の大沼祐樹さん。

 

たどりついたのは、サイズを3mm以下。選別機の各条件を絞り込み、メーカーとの共同開発で、アークサンドから金銀を選別することが可能になった。

 

 

仕組みはこうだ。トラックで運ばれた焼却灰からエディカレントでアルミや真ちゅうなどを取り出す。焼成してアークサンドになった人工砂を3mm以下のサイズにして、金銀滓(きんぎんさい)を抽出、精錬場に売却する。

 

「鉄、アルミなどを取り出し灰の量を減らすことで、炉の負担も減らすことができます」と桐山さんは話す。

 

欧州で焼却灰から直接、金銀を選別できるのは、焼却灰を数カ月、野積みにして大気にさらす「エージング」が行われ、鉛などの重金属を低減すると同時に水分を飛ばして濃縮されるからとみられる。一方、埼玉工場では人工砂のために焼成することが、エージング以上の作用をもたらした。

 

 

東京全体では、年間30億円

 

国土が狭い日本は、埋立処分地のひっ迫が大きな課題だったため、焼却することで減量化してきた。また、高度成長による公害問題を教訓に、ダイオキシンや硫黄硫化物などの有害物質規制を厳しくして世界に誇れる、安全・安心に配慮した炉になっている。

 

ツネイシカムテックス埼玉工場

 

焼却灰はリサイクルされなければ、処分場に送られる。ツネイシカムテックス埼玉工場は、焼却灰のほぼ100%を人工砂に変えてリサイクルするとともに、独自のシステムで有価物も選別し、「ツネイシ方式」で一石二鳥をかなえている。

 

篠原氏は「東京、大阪など都会の一般ゴミの焼却灰ほど、有価物が含まれている。東京全体では年間30億円になるのではないか」と話している。

 

筆者:杉浦美香、写真も

 

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