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7月に施行された中国の改正反スパイ法について、主要企業118社の5割超が今後の中国におけるビジネスの懸念事項と考えていることが11日、産経新聞が行った企業アンケートで分かった。118社中、具体的な対応に関して回答した86社の中で「既に対応した」や「対応を検討している」などとした企業が約6割にのぼり、企業が手探りではあるが対応を急ぐ現状も浮かび上がる。
アンケートは7月上旬~下旬に実施。118社から回答を得た。
改正反スパイ法では、2014年に施行された反スパイ法におけるスパイ行為の定義が拡大。従来は「国家機密」へのスパイ行為を摘発対象としていたのを、「国家の安全や利益に関わる文書やデータ、資料、物品」にも広げた。ただ、「国家安全」の定義は具体的に示されておらず、これまで以上に中国当局の恣意(しい)的な摘発や、日系企業の中国駐在員の拘束などが行われる懸念は大きい。
同法の受け止めについて「大いに懸念している」が12・7%、「やや懸念している」は40・7%で合計が5割を超えた。「あまり懸念していない」(9・3%)とする企業は中国で事業を行っていないケースが多い。中国で何らかの事業を行っている企業では「駐在員の日常生活、出張社員の行動がスパイ行為として摘発・拘束されるリスクが推し量れなくなる」(化学)などと、改正反スパイ法の運用に対する強い警戒感がうかがえる。
ただ、具体的な対応については、「駐在員、出張者向けの注意喚起」(食品)、「他社の対応状況のヒアリングを実施」(メーカー)など手探りの状態の回答が目立った。
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自動で文章などを作成する「生成AI(人工知能)」については、30・5%の企業が「活用を推奨している」と回答。産経新聞が今年4月に実施した前回のアンケートに比べ約10倍に増え、導入が進んでいる現状が鮮明になった。一方、安全性への懸念から社内の機密情報の入力については禁じているところが多く、各企業はAIリテラシーを向上させつつ、手探りで活用法を模索している。
回答では「活用の是非を検討している」が36・4%で最も多く、「個人の裁量に任せている」は7・6%だった。逆に「活用を禁止している」は2・5%、「特に決めていない」は0・8%にとどまり、ほとんどの企業が生成AIの活用に前向きな姿勢を取っていることが示された。
既に実施済みの活用方法としては「文章の作成や要約など」(金融)や、「社内での情報照会のサポートツールとして」(保険)といった、社内業務の効率化を目的とした内容が目立った。検討中の活用方法としては「商品開発業務への利用」(飲料)、「既存製品の新規用途の探索」(化学)など、顧客サービス向上への活用を模索する動きもみられた。
ただ、「社内限りの情報の入力は禁止している」(建設)といった情報漏洩(ろうえい)を懸念する声も多く上がった。生成AIの活用と規制については政府も「広島AIプロセス」などで統一的なルールを検討中で、「メリットとリスクの両面から検討している」(自動車)など、企業側の手探りの動きは当面続く見込みだ。
一方「入力データを社外に共有しない専用環境を構築済み」(化学)とする企業も複数あり、今後は各企業の業務に最適化させた生成AIの開発・活用が加速しそうだ。
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【回答企業】IHI▽曙ブレーキ工業▽旭化成▽アサヒグループホールディングス▽味の素▽イオン▽伊藤忠商事▽ANAホールディングス▽SMBC日興証券▽NEC▽NTT▽ENEOSホールディングス▽MS&ADインシュアランスグループホールディングス▽大阪ガス▽オリックス▽花王▽鹿島▽川崎重工業▽関西電力▽キッコーマン▽キヤノン▽九州電力▽京セラ▽キリンホールディングス▽クボタ▽KDDI▽神戸製鋼所▽コスモエネルギーホールディングス▽コマツ▽コロワイド▽サッポロホールディングス▽サントリーホールディングス▽JR東海▽JR西日本▽JR東日本▽JFEホールディングス▽JTB▽Jパワー(電源開発)▽J.フロントリテイリング▽資生堂▽清水建設▽シャープ▽商船三井▽スズキ▽住友化学▽住友商事▽住友生命保険▽セイコーエプソン▽西武ホールディングス▽積水ハウス▽セコム▽セブン&アイ・ホールディングス▽ゼンショーホールディングス▽双日▽ソフトバンクグループ▽SOMPOホールディングス▽第一生命ホールディングス▽ダイキン工業▽大成建設▽大和証券グループ本社▽大和ハウス工業▽高島屋▽武田薬品工業▽中部電力▽T&Dホールディングス▽TDK▽ディー・エヌ・エー▽帝人▽東京海上ホールディングス▽東京ガス▽東芝▽東レ▽トヨタ自動車▽豊田通商▽日産自動車▽NIPPON EXPRESSホールディングス▽日本製鉄▽日本郵船▽日本航空▽日本生命保険▽日本たばこ産業▽日本マクドナルドホールディングス▽任天堂▽野村ホールディングス▽パソナグループ▽パナソニックホールディングス▽ファーストリテイリング▽ファミリーマート▽富士通▽富士フイルムホールディングス▽ブリヂストン▽マツダ▽丸紅▽みずほフィナンシャルグループ▽三井住友トラスト・ホールディングス▽三井住友フィナンシャルグループ▽三井物産▽三井不動産▽三越伊勢丹ホールディングス▽三菱ケミカルグループ▽三菱地所▽三菱自動車▽三菱重工業▽三菱商事▽三菱電機▽三菱UFJフィナンシャル・グループ▽村田製作所▽明治安田生命保険▽メルカリ▽ヤクルト本社▽ヤマトホールディングス▽ヤマハ発動機▽吉野家ホールディングス▽楽天グループ▽リクルートホールディングス▽りそなホールディングス▽ローソン▽ロート製薬(五十音順)