中国人民解放軍が台湾周辺で「重要軍事演習行動」を
開始したニュースを映す北京市内の大型画面
=8月4日(共同)
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ペロシ米下院議長が台湾を訪問したことに中国が猛反発し、台湾に圧力をかけ始めた。中国政府は台湾との輸出入の一部停止措置を発動し、業界からは悲鳴が上がる。中国浙江省の治安当局が3日、同省滞在の台湾人男性を「台湾独立分子」として逮捕する〝報復〟も行われ、中国と行き来する台湾ビジネスマンの間では「次は自分かも」と動揺が広がっている。
中国の税関総署が台湾産のかんきつ類果物の輸入停止を発表したのは、ペロシ氏が台湾に到着した翌日の3日。果物から害虫と基準値を超える殺虫剤が検出されたことが理由という。
台湾中南部、雲林県のかんきつ類農家は「寝耳に水だ。今まで問題があると一度も言われたことがなかった。政治的報復であることは言うまでもない」と肩を落とした。
台湾向けの中国産天然砂も輸出が停止された。天然砂は台湾北部で建築材料として使われることが多い。突然の輸出禁止を受け、多くの建設現場で「工期が遅れる」と悲鳴が上がった。
浙江省で国家安全局に逮捕された台湾人男性(32)は数年前、台湾でミニ政党「台湾民族党」に参加し、政治活動をした時期があった。その後、政治の世界から離れ、ビジネスマンとして浙江省と台湾を行き来していたという。
逮捕されたのは、台湾での政治活動が原因。台湾民族党が「台湾の国連加盟をめざす」と目標を掲げていたことから、「台湾独立運動にかかわっていた」と判断されたとみられる。
男性は「反国家分裂法」違反の罪で、懲役10年以上の重い判決が下される可能性があるという。
現在、中国に滞在する台湾人ビジネスマンとその家族は100万人以上とされる。中国南部で電子工場を経営する台湾人男性は「以前、台湾で行っていた合法的な政治活動が中国で問題視されるケースはこれまで聞いたことがない。恐ろしい世の中になった」と強調。その上で「これから中国で商売するリスクはとてつもなく高くなる。そろそろ撤退を考えるときかもしれない」と話した。
筆者:矢板明夫(産経新聞台北支局長)