A group of naval vessels from China and Russia sail during joint military drills in the Sea of Japan

A group of naval vessels from China and Russia sails during joint military drills in the Sea of Japan, in this still image taken from video released on October 18, 2021. Video released October 18, 2021. Russian Defence Ministry/Handout via REUTERS ATTENTION EDITORS - THIS IMAGE WAS PROVIDED BY A THIRD PARTY. NO RESALES. NO ARCHIVES. MANDATORY CREDIT.

~~

 

台湾海峡の緊張が高まる中で、日本の軍事的役割が焦点となっている。米政府は台湾周辺の平和と安定を守るうえで同盟国との協力が重要と位置付けており、台湾の世論調査では有事に日本が来援すると思うと答えた人が6割近くに上った。日本政府も台湾有事を想定したシミュレーションを行っているが、あくまで日本に波及するケースにとどまる。武力攻撃に至らないグレーゾーン事態や台湾に在留する邦人の保護も含めた態勢強化が必要となりそうだ。

 

岸田文雄首相

 

台湾のシンクタンク「台湾民意基金会」が11月2日に発表した世論調査では台湾有事の際、日本の軍事的支援が「あり得る」と答えた人が58・0%に上った。米国が来援する可能性があるとの回答(65・0%)と比べればやや落ちるが、日本に対する期待が大きいことをうかがわせる。

 

日本は台湾と同盟関係になく、公式には台湾有事の際に来援するとは明言していない。岸田文雄首相は10月13日の参院本会議で「台湾有事という仮定の質問に答えることは差し控える。あらゆる事態に適切に対応できるよう平素から不断に検討している」と述べるにとどめている。

 

ただ、首相は同月11日のテレビ東京番組で「どんな事態にも対応できる態勢あるいは法整備をしっかりしておかなければならない」とも語った。当初の想定問答に「法整備」という文言はなく、具体的な検討も進んでいないが、首相周辺は「それだけ首相が深刻に事態をとらえている証拠だ」と解説する。

 

 

手つかずの邦人退避

 

複数の政府関係者によると、自衛隊は台湾有事を想定した図上演習などを繰り返し行っているという。中国軍が台湾侵攻と同時に沖縄県の米軍嘉手納基地を攻撃する事態や、尖閣諸島を占拠する事態を想定している。現有兵力を前提とした場合、米軍は自衛隊に最前線での戦闘行為ではなく、作戦地域周辺での警戒など補助的な役割や後方支援を求める可能性が高い。

 

ただ、自衛隊が行っているシミュレーションは、台湾有事が日本有事につながる場合や、来援した米軍が攻撃され、日本が集団的自衛権を発動する場合を前提としている。台湾有事が日本に波及せず、米軍の来援もない場合は想定していないという。

 

中国は2021年10月、台湾に向け数日にわたり、SU-30戦闘機を含む軍用機を飛行させた(AP)

 

一方、中国は台湾統一を図る際に米軍の介入を招かない形を模索する可能性が高い。日米台当局の間では、サイバー攻撃や経済的圧力で台湾に親中国政権を誕生させ、台湾統一を実現するシナリオが現実的だとの見方が大勢だ。こうしたグレーゾーン事態の場合、防衛省関係者は「手も足も出ない」と語る。

 

沖縄の普天間基地

 

台湾に在留する邦人約2万5千人の非戦闘員退避活動(NEO)をめぐる計画や訓練も手付かずだ。自衛隊幹部は「どうしても戦闘シナリオに力点が置かれてしまう。NEOにフォーカスした訓練もしなければいけない」と危機感を募らせる。

 

 

敵基地攻撃も課題

 

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は今月3日の講演で、台湾侵攻について「近い将来あるとは思わない」と語ったが、「何が起こってもおかしくない」とも述べた。こうした中で、首相は国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の戦略3文書の改定に向けた協議に着手するよう関係閣僚に指示した。

 

2021年7月にオンラインで開かれた日米台による戦略対話

 

政府関係者は「台湾有事を明示的に3文書に書き込むことはないだろうが、念頭に置くことは当然だ」と説明する。中国は沖縄や台湾を含む第1列島線の内側に米軍が進入することを阻止するためミサイル網を整備しており、米軍はこれに対抗するため同列島線にミサイルを分散配置させる構想を描いている。これに日本政府が保有を検討する敵基地攻撃能力をどのように位置づけるかも重要な課題となる。

 

筆者:杉本康士、田中靖人(産経新聞)

 

 

この記事の英文記事を読む

 

 

コメントを残す