Medaka 006

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「突然変異で珍しいメダカが生まれました」という手紙と写真が読者から届いた。メダカといえば、茶色っぽい小さな魚を思い浮かべるが、写真のメダカは群青色でうろこが光ってみえる。新型コロナウイルスの感染拡大で在宅時間が増え、メダカの飼育が今、人気ともいうし、「もしかすると新種かも⁉」と、浮き立つ心で手紙の送り主に会いに行った。

 

 

 

突然珍しい色が…

 

手紙をくれたのは、「少年ケニヤ」が産経新聞に掲載されていた昭和26年頃からの読者だという大阪府東大阪市在住の内山光次さん(77)。まずは探偵記者として、珍しいメダカをこの目で確かめなければ。自宅に潜入すると、玄関にメダカの入った水槽がいくつも置かれていた。

 

「今年生まれたメダカは数百匹」と話す内山光次さん=大阪府東大阪市

 

「孫が喜ぶかもわかれへんな」とメダカをもらったのをきっかけに、飼育歴は4年という内山さん。

 

かつて田んぼや小川などで普通に見かけたメダカは近年、生息数が激減し、平成11年に環境省レッドデータブックで絶滅危惧種Ⅱ類に指定されている。一方で、ペットショップなどで売られているメダカは、ほとんどが観賞用に品種改良されたものだ。

 

「近所の人にもらったメダカが次々に卵を産んだので、あっという間に水槽が増えた」と内山さん。口の先から背中まで光り輝く「鉄仮面」、ぷくっとした体形がかわいい「ダルマ」、青い体内光が美しい「深海」など、品種も8種類に増えている。

 

 

「一昨年夏、鉄仮面というメダカの卵をかえらせ育てていたら、1匹だけえらい珍しい色のがいたんです。それだけ容器を別にして年越しさせ、大きくなったのがこれ」と、写真のメダカを指した。内山さんは自分で「群青メダカ」と名前をつけ、産経新聞に写真を送ってくれた。ところが、7月中旬に死んでしまったという。

 

「死ぬ10日ほど前から底の方にいて、弱っていたのでぼちぼち寿命かなあと思っていた。残念やけど、まだその子供がたくさんいるので、もう一回、品種改良に挑戦してみたい」

 

 

初心者でも扱いやすい

 

そもそも内山さんのメダカは新種なのか。その写真を持って、今年3月に同市内の近鉄布施駅近くにオープンした改良メダカ専門店「めだか屋Me」へ向かった。

 

今年3月にオープンした「めだか屋Me」。メダカの飼育はお金をかけずに楽しめるのが魅力という=大阪府東大阪市

 

店内に入ると壁一面に水槽が並び、さまざまな改良メダカが泳いでいた。常時30品種ぐらいを入れ替えて展示しており、ヒメダカなら1匹50円、よく売れている幹之メダカでも1匹300円と安い。中には2万円の「マリアージュロングフィン」など高額の品種もあり、優雅に泳ぐ姿はまるで宝石のよう。

 

来店者は初心者や最近飼い始めた人が多く、人気の理由はやはり、わずかなスペースで手軽に飼える扱いやすさだという。専用器具や温度管理など、お金も手間もかからないので極端な話、発泡スチロールの箱でも飼えるという。

 

 

また、飼育する楽しみの一つが繁殖。メダカは生まれてから2カ月で卵を産み、稚魚も2カ月ほどで成魚になる。ペアで飼育すれば、たくさん増やすことができる。しかも珍しい特徴を持ったメダカ同士を掛け合わせれば、新種の「改良メダカ」が誕生するかもしれないというのだ。

 

そこで、内山さんのメダカの写真を同店の桃田一成さん(30)に見てもらった。「これ鉄仮面かな。ちょっと前までは珍しかったんですがね。今はメダカを飼育している人も多くなって、次から次へと新種が生まれて、すぐに新しくなくなる。新種を生み出すのもスピード勝負なんです」。どうやら新種ではないようだ。

 

 

 

人気は右肩あがり

 

「多くのメディアに取り上げられたこともあって、改良メダカが認知されてきたのは最近のことですね。コロナの巣ごもりも一つのきっかけかもしれませんが、人気はその前からありました。愛好家の数は右肩上がりに増えています」

 

こう話すのは、全国の愛好者でつくる「日本メダカ協会」(本部・広島県)事務局長の大場貴保さん。現在の会員数は過去最高の約300人で、今年になって新しい支部も3つできた。

 

全国的にも有名なメダカ専門店「めだかの館」のスタッフでもある大場さんは「最近は家族で来られる方が多いですね。鯉や金魚って男の趣味というイメージですが、メダカは女性にも人気があります。お母さんと娘さん、そのお子さんの3世代で飼っているパターンもありますよ」と教えてくれた。

 

同協会では年に2回、全国の愛好家から約300点のメダカが出品される品評会があり、新種の認定・登録を行っている。秋季の品評会は9月18日に開催され、どんな美しいメダカが入賞するか、注目されている。

 

改良メダカの可能性は無限大のようだ。探偵記者、新種発見! とはいかなかったが、水槽で泳ぐメダカを眺めていると、時間がたつのを忘れてしまう。小さな命に愛情を注ぐメダカ愛好家の気持ちが少しわかったような気がした。

 

筆者:上岡由美(産経新聞)

 

 

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