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中国の著名女子テニス選手、彭帥(ほう・すい)(35)さんが、中国の元副首相に性的関係を強要されたと告白したことに関する波紋が広がっている。2週間以上も消息不明となり、大坂なおみさんなどテニス関係者が安否を案じる。中国国営メディアが彭さんの「無事」をアピールするメールを公開したが、かえって懸念を深めており、北京冬季五輪にも影響を与えかねない雲行きだ。
彭さんは今月2日、中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」で、共産党最高指導部メンバーだった張高麗(ちょう・こうれい)元副首相(75)と不倫関係にあったことや、同意なく性的関係を迫られたことを赤裸々に記した文章を投稿。投稿は即座に削除され、彭さんの微博は閲覧できない状態が続く。中国では、この問題の報道は規制を受けている。
大坂なおみさんはツイッターで「彭帥と、彼女の家族の安全を願う」というメッセージを投稿。彭さんが「性的虐待」を告白した後に行方不明になったことを心配した。女子ツアーを統括する女子テニス協会(WTA)も公正な調査を求めた。中国外務省の定例記者会見で何度も質問が出ているが「外交問題ではない」などと繰り返している。
中国国営中央テレビ系の中国環球電視網(CGTN)は18日、彭さんがWTAのサイモン最高経営責任者(CEO)に送ったものだとする英文メールをツイッターで公開。性的暴行を「真実ではない」と否定し、「私は行方不明ではなく、危険な状況でもない。家で休んでいるだけで全て問題ない」としている。
火消しに走ったとみられるが、サイモン氏はすぐさま「懸念が高まった。本人が書いたと信じるのは難しい」という声明を出した。米CNNテレビ(電子版)は19日、サイモン氏が「(中国からの)ビジネスの引き揚げもいとわない」と述べ、中国側に適切な対応を求めたと報じた。
張氏が江沢民元国家主席に近い人物とされ、彭さんの告白が、党の重要会議、第19期中央委員会第6回総会(6中総会)の直前だったため権力闘争に巻き込まれたという指摘もある。ただ、中国筋は「張氏は引退して影響力に欠ける。今回は彼女の感情的な問題だろう」という見方を示す。
一方、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は18日、来年2月開幕の北京冬季五輪に参加する選手やファン、スポンサーに「彭のために声を上げるべきだ」と呼びかけた。彭さんの問題が、同五輪のボイコット論に火に油を注ぐ可能性もある。
筆者:三塚聖平(産経新聞中国総局)
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