戦後74年目の終戦記念日を迎えて思ったのは、国際情勢の舞台が一回転して、戦後とは別の局面が生まれつつあるということだ。日本全体が1日も早く覚醒してほしい。
終戦時に米国を中心とする連合国軍が考え出したのは、日本とドイツが軍事的に2度と立ち上がれない装置だ。日本には日本国憲法の9条を強要した。背景となったマッカーサー・ノートは、日本に自衛力の行使さえ禁じようとした。ドイツは連邦軍の保有を認められたが、ソ連に対する抑止力を果たすだけの役割に限定され、北大西洋条約機構(NATO)に完全に組み込まれてしまった。だから、ドイツ軍は自らの参謀本部を持っていない。第2次大戦中にチャーチル英首相の懐刀で、初代のNATO事務総長になったイズメイ卿が「NATOの目的はソ連を除外し、米国を引き入れ、ドイツを抑え付けるところにある」と表現したのは有名だ。
米の変化に対応できず
それが今どうなったか。国際社会では依然として最大のプレーヤーである米国のトランプ大統領は、公然と日米同盟の片務性を問題にしている。ペルシャ湾での危機に際しては、米主導の有志連合をつくり、関係国がそれぞれのタンカーを守るべきだとの要求が米国から出されている。自国のタンカーを防衛するのは当然なのに、岩屋毅防衛相は訪日したエスパー米国防長官と8月7日に会談した際、原油の安定供給確保、米国との同盟関係、イランとの友好関係を考慮した上で判断する、と伝えた。自衛の行動の前に他国との関係に配慮するといった第三者的発想は理解しにくい。
国際情勢が変化し、とりわけ米政権の日本に対する姿勢が変わっているのに対応できない日本のジレンマが岩屋発言に表れていないだろうか。トランプ大統領の目には、自らの手で自国船を防衛できるように有志連合という枠組みを用意しているのに、日本はいろいろ口実を設けて時間稼ぎをしている不思議な国と映じるだろう。
「強い日本」が時代の要請
トランプ大統領は昨年来、NATO諸国とりわけドイツに対して、国内総生産(GDP)の2%を防衛費に充てる国際的約束を履行せよと強く迫っている。私的な会合の場で、トランプ大統領はNATOから脱退してもいいとの意向を漏らしたと米紙は報道した。
米国が現在、日本とドイツに要求しているのは軍事的に「強い国」であり、それを妨げる日本国憲法は米国にとって障害になっている。加盟国が義務を果たさない軍事同盟NATOも、どうでもいい存在になった。時代に応じて国軍を持つ、そのために改憲を急ぐ必要性に気付かなければならない。
筆者:田久保忠衛(国基研副理事長)
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国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第614回(2019年8月19日付)を転載しています。