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参議院の「資源エネルギーに関する調査会」に参考人として招かれ、国基研のエネルギー問題研究会による政策提言「脱炭素の答えは原発活用だ」(令和3年4月12日)の基になった具体的なデータを用いて意見陳述をした。エネルギー問題研究会は、気候変動枠組み条約の交渉に加わった有馬純東大特任教授らの参加を得て、工学分野だけでなく、経済、防衛の視点も盛り込んで大所高所から政策提言をしたものだと説明した上で、次のような意見を述べた。
再エネで改善しないCO2排出係数
「我が国の太陽光発電能力は世界3位の67ギガワット(GW)で、100万キロワット(kW)の原子力発電所67基分の太陽光パネルが日本中に敷き詰められている。太陽光はかつて54基あった原発を上回る巨大電源になった。1位は中国の254GW、2位が米国の74GW、4位はドイツの54GWだ」
「しかし、これらの国は、1キロワット時(kWh)の電気を発電するのに何グラムの二酸化炭素(CO2)を排出するかという排出係数では世界の後進国だ。太陽光など再生可能エネルギーの比率が20%の日本は、1kWの電気ポットで湯を1時間沸かすと534グラムのCO2を排出する。原発を止めて、液化天然ガスと石炭火力の発電が75%を占めるからだ。再エネ比率が40%を超えたドイツは472グラムで、日本と大差ない。我が国が政府目標に従い、CO2排出量を46%減らして再エネ比率を上げても、CO2の排出係数が改善しないことは、ドイツの例を見れば明らかだ」
「排出係数が少ないのはノルウエーの13グラム、スイス42グラム、スウェーデン46グラム、フランス70グラムなどで、水力や原子力発電の比率が高い国が上位を占める。その次が風力発電の比率が高い国だ。カーボンニュートラル(CO2排出量の実質ゼロ)の達成には、水力と原子力の組み合わせが最強である」
「良識の府」を感じさせた議員の質問
議員からは「良識の府」を感じさせる質問が相次いだ。原発事故を起こした時の放射性物質による汚染についての質問(山添拓議員=日本共産党)には、放射性物質を漉し取るフィルターベントの役割を説明した。
電力の安定供給に関する質問(杉久武議員=公明党)には、火力発電所や原発の蒸気タービンの回転エネルギーにより電力系統を安定させている事実を説明した。高レベル放射性廃棄物のゴミの問題についての質問(舟山康江議員=国民民主党・新緑風会)に対しては、使用済み核燃料の再処理で高レベル廃棄物の有害期間は10万年から8000年に短縮され、小型モジュール炉(SMR)の一つ、小型高速炉(PRISM)を使うと有害期間は300年に短縮できると答弁した。
原発の新増設や建て替えがなく、廃炉しかない場合の優秀な人材の確保方法(梅村聡議員=日本維新の会)については、SMRなど夢のある新しい原発の開発が重要だと答えた。SMRなど最新型原発による電力安定供給の見通し(塩村あやか議員=立憲民主・社民)についても、再エネの電気出力の不足分を速やかに補うことができる再エネ共生型SMRの開発を提案した。
筆者:奈良林直(国基研理事・東京工業大学特任教授)
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国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第890回(2022年2月21日)を転載しています