Empress Masako

On the occasion of her 59th birthday, Empress Masako poses for a photo at the Imperial Palace on December 5 (© the Imperial Household Agency).

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皇后さまは12月9日、59歳の誕生日を迎え、宮内庁を通じて感想を文書で公表された。新型コロナウイルス禍でこれまで見送られてきた地方訪問が再開したことについて、「各地で大勢の方に笑顔で温かく迎えていただいたことは、想像していた以上に嬉(うれ)しく、また、有り難いこと」と振り返られた。

 

皇后さまは今年10、11月に栃木、沖縄、兵庫の3県を訪れたほか、エリザベス英女王の国葬参列のため、9月に英国をご訪問。昨年は6件にとどまった都内への訪問も今年は25件に増加し、昨年は機会がなかった外国元首との会見にも臨まれた。

 

沖縄訪問では南部戦跡を訪ね、その後、かりゆしのシャツに着替えて県民と交流される機会も。皇后さまは文書で訪問できたことを喜ぶとともに、「平和の尊さや大切さを改めて心に深く刻む機会になりました」とつづられた。

 

Empress Masako
沖縄に関する資料や置物を前に、天皇陛下と言葉を交わされる皇后さま=12月5日午後、皇居・御所(宮内庁提供)

 

一方、今年は世界各地で戦争や災害が相次いだことにもご言及。「皆が相手を尊重しつつ力を合わせていくことの大切さを身に沁(し)みて感じております」との思いを明かされた。

 

また、平成5年に29歳と半年で結婚し、今年で「人生のちょうど半分ほどを皇室で過ごしてきたことに、感慨を覚えております」とご述懐。「たくさんの喜びの時とともに、ときには悲しみの時も経ながら歩んできた」と振り返り、天皇陛下をはじめ多くの人に「見守っていただいてきたことを思い、心から感謝したい」とされた。

 

Empress Masako
即位を披露する「祝賀御列の儀」で手を振られる天皇、皇后両陛下=2019年11月10日、東京都千代田区

 

宮内庁を通じて文書で発表された感想の全文は以下の通り。

 

 

今年もこうして無事に誕生日を迎えることができますことを有り難く思います。

 

この1年は、コロナ禍(か)も続く中、国際的な紛争や、世界各地での自然災害などが重くのし掛かり、心が痛むことの多い年であったように感じます。

 

世界各地での戦争や紛争により、子どもを含む多くの人の命が失われていることに深い悲しみを覚えます。国際社会において、平和な世界を作っていくという大きな目標に向かって、皆が相手を尊重しつつ力を合わせていくことの大切さを身に沁(し)みて感じております。

 

水害や地震などの大きな災害も起きており、パキスタンでは、夏の期間の豪雨により国土の約3分の1が水に浸(つ)かり、全人口の約15パーセントに当たる3300万人が被災したと聞きます。洪水や干ばつによる被害は、ほかのアジアの国々やオーストラリア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカなど、世界各地で起きており、気候変動対策が急がれます。今後、持続可能な世界を築いていくためには、世界の人々が知恵を出し合い、共に手を取り合って、協力していくことが急務であると感じます。

 

Empress Masako
即位の儀で色彩豊かな五衣唐衣裳の装束に身をつつまれた雅子さま=2019年

 

国内でも、地震や大雨、そして台風による災害が今年も起こりました。亡くなられた方々とその御遺族に心からのお悔やみをお伝えするとともに、被害に遭われた方々にお見舞いをお伝えいたします。

 

英国のエリザベス二世女王陛下が、70年もの長きにわたる御在位の後、今年9月に崩御されたことも残念なことでした。英国国民はもとより、世界中の人々が女王陛下の崩御を悼みました。長年にわたって人々を導かれた女王陛下のお心の深さや知性、そして、その御存在の大きさを改めて感じ、心からの敬意と哀悼の気持ちを抱きました。

 

我が国においては、今年は、沖縄復帰50周年という節目の年になりました。そのような年に、秋の国民文化祭及び全国障害者芸術・文化祭に際して沖縄県を訪問できたことを嬉(うれ)しく思うとともに、平和の尊さや大切さを改めて心に深く刻む機会になりました。

 

絵画をつくる子どもに声をかけられる天皇、皇后両陛下=10月23日午後、沖縄県豊見城市(共同)

 

コロナ禍の中で、地方への訪問を3年近く行うことができずにおりましたが、10月に開催された栃木県での国民体育大会の折に再開することができ、11月には、兵庫県での全国豊かな海づくり大会に出席することができるなど、各地で大勢の方に笑顔で温かく迎えていただいたことは、想像していた以上に嬉(うれ)しく、また、有り難いことでした。

 

一方で、コロナ禍や最近の物価高などにより、多くの人々が様々な困難を抱えながら生活していることに心が痛みます。3年近くにもわたって制約のある生活を続けている子どもたちへの影響も案じられます。

 

重苦しい空気の中で過ぎてきたように感じる今年ですが、先日のサッカーのワールドカップでは、日本中の人々が熱心に応援をする中、日本代表チームがすばらしい健闘をし、多くの人々に、大きな感動や夢とともに、困難に立ち向かう勇気を与え、日本の人々が心を一つにする機会になったことも印象に残る出来事でした。

 

今回、50代最後の誕生日を迎えるに当たり振り返ってみますと、私が、当時の皇太子殿下との結婚により皇室に入りましたのが平成5年6月9日、ちょうど29歳半の時でした。本日の誕生日で、その時からちょうど29年半になります。いつの間にか人生のちょうど半分ほどを皇室で過ごしてきたことに、感慨を覚えております。

 

「平和の礎」を訪問し、戦争犠牲者の名前が刻まれた石碑をご覧になる天皇、皇后両陛下=平成9年7月15日、沖縄県糸満市

 

これまでの人生を思い返してみますと、29歳半までの前半にも、また、皇室に入りましてからの後半にも、本当に様々なことがあり、たくさんの喜びの時とともに、ときには悲しみの時も経ながら歩んできたことを感じます。そして、上皇上皇后両陛下のお導きをいただきながら、どのようなときにも、天皇陛下を始め、多くの方々に私の歩みの一歩一歩を支え、見守っていただいてきたことを思い、心から感謝したいと思います。

 

来る年が、我が国、そして世界の人々にとって、安心のできる、より良い年となりますことを願いつつ、これからも、国民の皆様の幸せを常に祈りながら、できる限りの務めを果たしていくことができるよう努力したいと思っております。

 

この機会に、日頃より皆様から寄せていただいている温かいお気持ちに対し、改めて心からの御礼をお伝えしたいと思います。

 

 

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