能力向上型の「12式地対艦誘導弾」
(防衛白書に掲載された三菱重工の提供写真)
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防衛省が、敵の射程圏外から攻撃できる島嶼防衛用の長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」について、陸上自衛隊に配備された「12式地対艦誘導弾」の能力向上型を踏まえた国産ミサイルを中心とする方針を固めたことが8月21日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。政府が保有を検討する「反撃能力」としての活用も念頭に置く。年末の来年度当初予算案編成に向けて数量など詳細の検討を進める。
防衛省がスタンド・オフ・ミサイルとして中心的な活用を想定するのは、12式を戦闘機から発射できる「空発型」や艦上から発射できる「艦発型」などに改良し、飛距離を伸ばした能力向上型。同省は明らかにしていないが、現行数百キロの射程を延伸し1000キロ以上を目指す。他にも変則軌道で敵の迎撃を回避する「高速滑空弾」と、音速の5倍以上の速度で進む「極超音速誘導弾」を想定し、研究開発を進めている。
これらはいずれも国産ミサイルだ。防衛省は当初、F35Aステルス戦闘機にノルウェー製巡航ミサイル「JSM」を、改修したF15に米製空対地ミサイル「JASSM(ジャズム)」と、米製空対艦ミサイル「LRASM(ロラズム)」の搭載を計画した。しかし、昨年には改修費高騰を理由にロラズムを見送り、JSMも米製機材の不足で納入が遅れている状況にある。
輸入ミサイルは戦闘機に搭載するための改修作業が必要になるが、国産は戦闘機に合わせて量産可能で経費が抑制でき、安定供給が見込める。防衛省は12式改良型について令和8年度以降の導入予定を1~2年前倒しして早期の装備化を図りたい考えだ。
また、艦発型の12式について、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替措置として建造する「イージス・システム搭載艦」からも発射できるようにする。
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【スタンド・オフ・ミサイル】 相手の対空ミサイルなどの圏外となる離れた場所から攻撃できる通常より射程の長いミサイル。各国のレーダーやミサイル技術の進展で、相手の射程圏外の安全な場所から攻撃する重要性が高まっている。日本では離島が侵攻された際、作戦に当たる自衛隊員のリスクを減らすための島嶼防衛用として導入が検討されている。