トルコ製の攻撃型ドローン「TB2」
(トルコ・バイカル社ホームページより)
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防衛省が来年度から攻撃型ドローン(無人機)の運用に向けた本格的な検討に乗り出すことが30日、分かった。ロシアのウクライナ侵攻では、ウクライナ軍のトルコ製ドローン「バイラクタルTB2」がロシア軍の地対空ミサイルを攻撃するなど能力の高さを知らしめた。ドローン戦は現実になりつつあるが、自衛隊への導入は偵察型などに限られ本格導入には程遠いのが現状だ。
ウクライナ軍は、侵攻開始3日目ごろからドローンでロシア軍の地対空ミサイルを攻撃。前線への物資補給ルートでは、輸送車などを破壊して進軍を遅らせることに成功したとされる。また、募集した民間ドローンで撮影した被害動画をインターネット上で公開して情報戦に活用し、各国からの支援にもつなげた。
ドローンを無力化する電子戦機器も存在感を示した。ロシア軍のドローンはウクライナ軍のドローン基地を破壊しようとしたが、ウクライナの電子戦機器が電波を発生させて無力化。ドローンの主な活動領域である地上1キロまでの低空域の制空権掌握を阻まれた。
ドローンには自衛隊も注目する。陸上自衛隊トップの吉田圭秀陸上幕僚長は17日、「安価なドローンを大量に使ったスウォーム(集団)での偵察や攻撃が有効な軍事手段であることは間違いない」と述べた。
だが、導入状況は災害対応や戦況把握用の1~2メートルほどの小型機に限られ、長距離飛行が可能な大型機は空自三沢基地(青森)に偵察型3機が今月から配備され始めたばかり。防衛省は来年度予算で小型の攻撃型ドローンの有効性や諸外国の機体などに関する調査費3000万円を計上したが、「運用のあり方から研究する」(担当者)段階だ。
ドローン映像を分析した慶応大の古谷知之教授(国土安全保障)は「生身の人間を戦場に送り出すより替えが利くロボットは現代戦でのウエートを占めていくだろう。特に人口減少社会では有効だ」と話す。
敵のドローンに対するドローン攻撃が日本の基本姿勢である「専守防衛」に反するかといった議論も途上にある。政府が年内をめどに進める国家安全保障戦略(NSS)などの改定ではドローン戦の位置付けを明確にする必要もありそうだ。
筆者:市岡豊大(産経新聞)