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「ジャパニーズウイスキー」の人気が過熱している。ここ10年近く、炭酸水で割った「ハイボール」ブームや、関連ドラマの放送を機に国内での消費が復活、さらに国際的な品評会で受賞する銘柄が相次ぎ、世界での評価も一気に高まっている。国産ウイスキーは需要増から原酒も不足。熟成期間の長い品はオークションでの取引や、投資対象としても注目を集めている。
日本酒や焼酎を手がける宝酒造が12月1日、1本462万円の「白河1958」(700ミリリットル入り)を70本限定で発売したところ、わずか1日で受注が予定数に達した。同社が平成15年に閉鎖した福島県白河市の工場で昭和33年に蒸留された原酒のみを使ったシングルモルトウイスキーという。
サントリーも令和2年にシングルモルトウイスキー「山崎55年」を100本限定で売り出したところ、1本330万円(700ミリリットル入り)が完売するなど、高額にもかかわらず購入者が後を絶たないほどの人気だ。
業界団体である日本洋酒酒造組合が発表した国内のウイスキー出荷数量によると、平成19年は年間約6091万リットルに落ち込んだが、サントリーが仕掛けた「ハイボール」人気を受け、22年に約8127万リットルまで回復。その後、ニッカウヰスキー創業者の半生を描いたドラマ「マッサン」の放送で人気が再燃し、令和元年は平成19年比2・6倍となる約1億5943万リットルとなった。
海外に目を転じても、ニッカウヰスキーやサントリーの銘柄が国際的な品評会「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ」(ISC)で金賞を獲得するなど、ジャパニーズウイスキーは賞レースの常連ともいえる状況だ。今や世界5大ウイスキーに数えられるまでになっているといい、日本洋酒酒造組合(東京)の新井智男・専務理事は「海外に比べ、国内のウイスキーメーカーの数は少ない分、各社が技術を掘り下げ、切磋琢磨(せっさたくま)し、繊細な味わいを生み出した」と、人気の秘密を指摘する。
国税庁によると、日本のお酒の輸出額は10年連続で過去最高を更新、令和3年には1000億円を初めて超えたが、ウイスキー人気がその数字を後押しする。
一方で、急激な需要増による原酒不足にも悩まされており「山崎」「竹鶴」などの一部商品では販売休止する銘柄もある。サントリーは平成25年から令和2年までで約510億円を投じ、原酒を熟成させる貯蔵能力などを増強。ニッカウヰスキーも生産能力の強化に取り組んでおり、令和3年の原酒生産量は平成27年比で約1・9倍に達した。
また、近年はオークションサイトで転売され、投資の対象としても需要が高まっている。「山崎55年」は今年6月に米オークションで約8100万円の高値で落札されたことが話題となった。メーカー側は困惑するが、新井氏は「これもジャパニーズウイスキーの市場価値を表す指標のひとつ」と話している。
筆者:田村慶子(産経新聞)