棋王戦予選決勝に勝利し、棋士編入試験の受験資格を得た
里見香奈女流四冠(左)
=5月27日、大阪市福島区の関西将棋会館
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第167回芥川賞・直木賞の受賞作は、7月20日に決まる。すでに発表されている候補作の作者を見ると、芥川賞はすべて女性、直木賞でも男性は一人だけだ。文学では「女流」という言葉が死語になって久しい。
一方、囲碁や将棋の世界では今も健在である。囲碁の女流棋士になる道は、一般採用枠のほかに「女流枠」がある。女流棋戦はもちろん、ほとんどの一般棋戦で男性の棋士と同じ扱いを受ける。昇段の規定も同じだ。
3年前に史上最年少の10歳でプロ入りを果たした仲邑菫二段の場合は、別の「英才枠」だった。若き天才を見つける目的で新設されたもので、無試験である。昨年は43勝18敗と男女を通じて3位の勝ち星を挙げた。今年に入っても、女流名人戦の挑戦者に名乗りを上げるなど、期待通りの活躍である。
将棋界ではプロ棋士と女流棋士は明確に区別される。段位の制度も異なる。棋士になるには養成機関である奨励会の三段リーグ戦を勝ち抜くか、編入試験に合格するしかない。女流のタイトルを総なめにしてきた里見香奈女流四冠(30)でさえ、奨励会ではあと一歩のところで涙をのみ、年齢制限で退会している。ところがその後の好成績によって、このたび編入試験の受験資格を得た。
女性に門戸を開く囲碁界に対して、将棋界は実力主義と男女平等を徹底しているといえる。実は囲碁、将棋ともに、競技人口の減少に苦しんできた。女性の活躍によって人気復活を図りたい思惑は共通している。
8月に始まる若手棋士5人との試験対局で3勝すれば、史上初の女性の「棋士」が誕生する。里見さんは「静かに見守って」とのコメントを発表しているが、藤井聡太フィーバー以来の盛り上がりは間違いない。
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2022年6月30日付産経新聞【産経抄】を転載しています