Japan PM Shinzo Abe Coronavirus

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安倍晋三元首相といえば世界各国の首脳から厚い信頼を受けた外交の名手だったが、その裏話もとても興味深かった。2016年10月、フィリピンのドゥテルテ大統領(当時)との会談直後に会話した際には、安倍氏の口からいきなり「面白かった」という言葉が飛び出した。

 

安倍晋三首相(右)と和やかな表情で握手するフィリピンのドゥテルテ大統領(いずれも当時)=2016年10月26日午後、首相官邸

 

ドゥテルテ氏は会談で、地元のゴルフ場で子供に暴力を振るう韓国人客に注意したエピソードを語った。相手が言うことを聞かないためゴルフカートで体当たりし、こう脅かしたという。「ここは韓国じゃない。これ以上やったら次は…」。通訳も困った顔をしていたといい、セリフの続きはここでは書けない。

 

13年9月、ロシアでの国際会議では、それまで安倍氏とは会談しないと明言していた中国の習近平国家主席に駆け寄り、握手を交わした。初接触の感想はこうだった。「習氏は反射的に握手に応じた後、固まってしまった。数秒後にやっと話し出したと思ったら、ろくに挨拶もしないで『歴史に鑑(かんが)み反省し』といつもの公式発言を始めた」。ロボットみたいだったとも漏らしていた。

 

20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット) 中国の習近平国家主席(右)と握手する安倍晋三首相 =2019年6月27日午後、大阪府大阪市北区 (代表撮影)

 

14年6月、ベルギーでの先進7カ国首脳会議は、ロシアがウクライナのクリミアを併合した問題で荒れていた。独り制裁を唱えて孤立した米国のオバマ大統領(当時)と、欧州各国首脳の仲裁役を務め、丸く収めたのが安倍氏だった。

 

G7サミット・ワーキングセッションに臨む安倍首相(手前左)、オバマ米大統領(同右)ら=2016年5月26日午後、三重県志摩市(代表撮影)

 

この時はオバマ氏に初めてハグされ、イタリアのレンツィ首相(当時)からはハイタッチを求められた。安倍氏は語った。「首脳はみんな自分の主張しかしないから、『和をもって貴しとなす』の日本はまとめ役になれる」。

 

親交があった多くの国の首脳級が安倍氏をしのび参列する9月27日の国葬は、できるだけ静謐(せいひつ)な環境の下で迎えたい。

 

 

2022年8月13日付産経新聞【産経抄】を転載しています

 

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