20220828 TICAD 002 Kishida

Prime Minister Kishida attends the closing ceremony of the Tokyo International Conference on African Development (TICAD) at the prime minister's official residence on August 28, 2022 (provided by the Cabinet Public Relations Office)

アフリカ開発会議(TICAD)の閉会式に臨む岸田首相
=8月28日午後、首相公邸(内閣広報室提供)

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54の国があるアフリカ大陸には14億人以上が居住しており、「最後のフロンティア」と呼ばれる有望な投資先として世界の注目を集めている。日本政府が主導してチュニジアの首都チュニスで8月27、28日の2日間にわたって開催されたアフリカ開発会議(TICAD)は、大規模なインフラ支援を行う中国や、軍事面で結びつきの強いロシアがアフリカで影響力を拡大している現状からの巻き返しも意図している。ただ、中露とアフリカ諸国との関係はかなり緊密で、日本が割って入るのは決して容易ではない。

 

 

圧倒的な中国の存在感

 

中国は1960年代頃から、アフリカ諸国に資金や労働力を援助し、浸透してきた。2000年には日本のTICADに似た中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)を設立。近年は巨大経済圏構想「一帯一路」の下でインフラ融資を軸に協力を進め、経済や安全保障など幅広い関係を築く。

 

中国メディアなどによると、中国は2020年まで12年連続でアフリカ最大の貿易相手国となった。15、18年のFOCACでは600億ドル(約8兆円)規模の資金協力を約束。21年は400億ドルに減ったが、中国の融資でできた鉄道や道路などのインフラはアフリカ各地にあり、存在感は圧倒的だ。

 

 

「債務のわな」方針転換も

 

巨額融資を背景に国連外交などでアフリカに影響力を行使してきた中国。だが近年、途上国を借金漬けにする「債務のわな」への懸念が巻き起こる。

 

中国が国際空港に2億ドルを融資したウガンダでは昨年、借金を返せなければ中国に空港を差し押さえられるとの見方が浮上、地元の反発が起きた。一帯一路の海の要所であるジブチは対中債務が国内総生産(GDP)比で4割近く、17年には中国が海外初の軍事基地を建設する事態となった。

 

ジブチでコンクリート壁に囲まれ、監視塔が建つ中国軍の基地=2017年12月(佐藤貴生撮影)

 

対中債務の多いアフリカの国は少なくないが、中国政府は一連の懸念を「事実無根だ」と否定。今月には17カ国計23件の債務免除の方針も公表した。批判をかわす狙いとみられるが、他方で「従来以上にアフリカの意向をくみ始めた」との見方も出始めた。中国は6月、「アフリカの角」と呼ばれる北東部地域諸国と安全保障に関する会議も初開催。新たな外交の動きを見せている。

 

 

露のウクライナ侵攻で貧困に直面

 

一方、新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響が続くなかでロシアがウクライナに侵攻し、両国に食料を依存する国が多いアフリカの見通しは、足元では明るいとはいいがたい。

 

アフリカ開発銀行のリポートによると、コロナ感染拡大の影響で昨年はアフリカ大陸全体で約3000万人が深刻な貧困状態となり、2200万人が職を失った。ロシアとウクライナの戦闘で新たに180万人が深刻な貧困に直面するとみられ、この傾向は少なくとも数年続くと予想される。

 

農業大国同士の戦闘の長期化は、アフリカの人々の食料確保に暗い影を落としている。国連食糧農業機関(FAO)によると、両国から輸入する小麦への依存率はエリトリアやソマリアが国内供給量の90%超に達するほか、1億人以上が住むエジプトも7割を超えるなど、多くの国で不安が広がっている。

 

 

出遅れた米も会議を計画

 

食料危機は通貨の価値下落とインフレを招いた。エジプトの首都カイロの主婦(33)は「水道からガス、電気まであらゆる料金が上がった。8月は休暇で家族旅行に出かけたり、新学期に備えて子供の学用品を購入したりして、ただでさえ出費がかさむので大変な負担だ」とこぼした。

 

またアフリカには、東西冷戦時代から、旧ソ連との関係が深い国が多く、後継国のロシアはアフリカ諸国への最大の武器輸出国である。ロシアのウクライナ侵攻後の4月、国連総会で行われたロシアの人権理事会での理事国資格停止を求める決議では、32のアフリカ諸国が反対または棄権に回った。アフリカへの浸透が遅れている米国は今年12月、各国首脳をワシントンに招いて、米アフリカ首脳会議の開催を計画している。

 

筆者:佐藤貴生、桑村朋(産経新聞)

 

 

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