横田めぐみさんの母校で開かれた写真展
=2019年3月18日、東京都品川区
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北朝鮮が日本人拉致を認め、謝罪した平成14年9月17日の日朝首脳会談から間もなく20年となるのを前に、拉致被害者の横田めぐみさん(57)=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(86)が6日、報道陣の取材に応じた。長い時間が経過してもなお、まな娘の帰国のため闘い続ける日々は続き、「いつまでたっても解決しない。言いようのないいらだちを強く感じる」と語った。
日朝首脳会談で、北朝鮮は拉致被害者について「5人生存、8人死亡」と伝えた。昭和52年に新潟市で拉致されためぐみさんは「死亡」とされた一人だった。
会談を受けて行われた20年前の記者会見では、めぐみさんの父、滋さん(令和2年に87歳で死去)は「残念な結果になりました」と言葉を詰まらせた。早紀江さんは「まだ生きていることを信じ、闘ってまいります」と気丈に述べた。
「これだけ待ち続け、簡単に『そうですか』ということはできなかった。北朝鮮でつらい思いをしている子供たちに申し訳ないと思い、必死に話した」。早紀江さんはこのときの心境をそう振り返った。
政府は拉致問題を「最重要課題」と位置付け、再び日朝首脳会談の実現を目指すが、進展はない。この20年で、多くの家族がわが子やきょうだいとの再会がかなわず亡くなった。「むなしい。地獄の苦しみを味わっている」。報道陣に対し、早紀江さんは今の思いを率直に口にした。
また、バイデン氏ら米大統領4人との面会にも触れ、「偉い人に会えた、良かったね、また静かになる、その繰り返しだった。大統領が協力するといっても、日本政府の行動がないと進まない」と訴えた。
めぐみさんと再会する日を思い、健康に気を使う。買い物に出かけ、ご飯を作り、風呂の掃除をする。できるだけ身体を動かすようにしている。滋さんが亡くなった年齢にも近づき、衰えは痛感している。
「元気でいてね」。めぐみさんにかけたい言葉を問われると、そう思いを語った。
筆者:橘川玲奈(産経新聞)