~~
岸田文雄首相が、来日した尹錫悦韓国大統領と会談し、普遍的価値を重んじる国同士だとして、安全保障など各分野での協力を強化することで一致した。いわゆる徴用工訴訟問題をめぐり、韓国政府が示した「解決策」を岸田政権が受け入れ、首脳会談が実現した。
文在寅前政権時代の韓国は「徴用工」訴訟への最高裁判決で、無実の日本企業に賠償を命ずるなど反日行動を重ね、両国関係は戦後最悪になっていた。
尹大統領来日を機に両国関係が一気に雪解けを迎えると手放しで喜ぶ向きがあるが、あまりに甘い見方だ。その証拠に首脳会談後の共同声明は見送られた。
日本海で韓国海軍駆逐艦が海上自衛隊哨戒機にレーダー照射した問題の具体的解決は、両首脳の共同会見で語られなかった。これでは韓国を信頼できない。
韓国側が史実を歪(ゆが)めて批判し、日本側は「なあなあ主義」で頭を下げて事を収めようとする。このような不健全な関係は今回も解消されなかった。落ち度もないのに過去の謝罪表明を日本側が確認する悪(あ)しき前例を作った。
法令に基づき、賃金も支払っていた勤労動員にすぎない徴用工への「賠償」はあり得ない。その「肩代わり」が解決策の柱だという。日本が非道だったという誤った印象を内外に広げかねない。岸田政権は史実をもっと発信する必要があったのではないか。
韓国側では、反日の立場から不満を述べ立てる勢力も根強い。岸田政権が今回選んだのは、尹政権が政策遂行力を持っている間だけの時限的な、うわべだけの「関係改善」にすぎない。
北朝鮮は16日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を通常より高い角度で発射し、北海道・渡島大島西方約200キロの日本海に着弾させた。到底容認できない挑発といえる。
北朝鮮の脅威を前に日韓、日米韓の安保協力は進めるしかないが、韓国は自衛隊機へのレーダー照射という危険な敵対的行動をとったことを潔く認め、再発防止策を講ずる誠意をみせるべきだ。
日本は、軍事転用の恐れがある物資の管理体制で韓国に不備があったため対韓輸出管理を厳格化してきた。政府はその一部の解除を発表したが、残りの部分についてはムードに流されず、改善状況を慎重に見極めて判断すべきだ。
◇
2023年3月17日付産経新聞【主張】を転載しています