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次期衆院選をめぐる思惑が飛び交うなか、「減税」が争点に浮上している。「増税」イメージを払拭しようと岸田文雄首相が打ち出した減税策は企業中心の「偽減税」との批判もあり、与党幹部から所得税の減税論も出てきた。さらに一部野党に加え、自民党の議連からも「消費税率を5%に引き下げるべきだ」との提言が飛び出したが、実現は可能なのか。
自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は10月4日、消費税や所得税の減税を求める提言をまとめた。物価高対策の時限措置として消費税率を10%から5%に引き下げ、8%の軽減税率が適用されている食料品などは時限的にゼロにするという案だ。
議連共同代表の中村裕之衆院議員は「賃上げやストックオプション(新株予約権)などの減税措置は企業向けだ。物価高で国民生活が苦しいなか、消費税の方が幅広く国民に理解しやすい」と語る。
岸田首相は7日、「経済成長の果実を国民に還元すべきだ」として給付措置や減税、社会保障負担の軽減に言及したが、消費税には触れなかった。鈴木俊一財務相は消費税減税について「極めて慎重に判断しなければならない」と否定的だ。
消費税は「社会保障目的税」のため、減税は難しいとの指摘もある。中村氏は「消費税の一定割合が過去の社会保障費関連の国債の償還に充てられている側面もある。法改正や特例国債の発行は必要かもしれないが、消費税を減税しても社会保障費は十分賄える。提言は岸田首相を後押しし、議論を活発化させるのが狙いだ」と強調する。
野党では国民民主党の玉木雄一郎代表が、所得税と消費税の減税を柱とする経済対策を策定し、臨時国会で法案提出を目指すと明らかにした。
立憲民主党の泉健太代表は9日、所得税減税について「実現はだいぶ後になり、即効性がない」と批判、減税は争点にならないとの見解だ。
岸田政権や与党は消費税減税に踏み切れるのか。
早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「本気で消費税減税をするなら党政調会や税制調査会を通して法案を提出する必要が出てくる。社会保障費の歳出カットも必要となるため、政治家は覚悟しなければならない。ただ、政治家が本気で減税にかじを切ることは、財務省も歳出改革をやらざるを得なくなるので重要だといえる」と指摘した。
与野党から浮上した「消費税減税」論
- 自民党:消費税率を5%に時限的に引き下げ、食料品などはゼロに(10月4日、若手議員らの議連が提言)
- 日本維新の会:「ガソリン税や消費税の減税に踏み込むべき」(9月26日、音喜多駿政調会長が「X」で)
- 国民民主党:「所得の増加以上に税収が伸びている部分については所得税や消費税の減税」(10月3日、玉木雄一郎代表が記者会見で)
- 共産党:「まずインボイスを廃止し、緊急に消費税減税を決断すべきだ」(10月5日、志位和夫委員長が「X」で)