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インドのムンバイで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会は10月16日、2028年開催の米国ロサンゼルス五輪の追加種目5種目を正式決定した。ラクロス、野球・ソフトボール、フラッグフットボール、スカッシュ、クリケットの5種目が追加種目。ラクロスは120年ぶりの復活種目となる。
120年ぶり復活
ラクロスは北米の先住民族がレクリエーションもしくは戦闘訓練として行っていたゲームが発祥とされる。フランスの宣教師がその光景を見て「ラクロス(教会の司教が持つ杖)」と名づけたのが名前の由来だ。近代スポーツとしては米国、カナダ、英国、オーストラリアを中心に行われ、1904年の米国セントルイス五輪と1908年の英国ロンドン五輪の正式種目となった。以降は1928年、32年、48年の公開競技にとどまり、正式種目としては120年ぶりの復活となる。
20世紀後半には男女別の国際組織で運営されていたが、2008年に男女組織が統一され、World Lacrosseとして発足した。これは、「ラクロスを五輪種目に復活させよう」とする組織の動きの始まりだった。2017年には五輪の新種目候補の祭典The World Gamesで女子の競技が公開され、2021年にIOCから競技として承認された。2022年開催のThe World Gamesでは男女のラクロスが、五輪種目を想定した新ルールで公開された。2023年にロス五輪の組織委員会が追加種目に申請し、このたび正式採用された。
この間にWorld Lacrosseへの加盟国・地域は90になった。(2023年10月16日現在)
World Lacrosseプレジデントのスー・レッドファーン氏はラクロスの五輪種目決定について「ここ十数年間、私たちはラクロスの五輪種目復活に向けて、世界中のラクロス関係者が一丸となって全力で頑張った成果だと信じる。これから、ラクロスが未来に向けて貢献する姿を見せる時だ」とこれからの抱負をコメントしている。
五輪のラクロスは新スタイルで
五輪でのラクロスは通常のルールから変更されたスタイルになる。通常のルール、グラウンドサイズをコンパクトにして、ノンストップでのスピーディーなルールに変更される。通常ラクロスは1チームが10人(グラウンド内)、審判は男子が5人(女子は4人)、時間は15分×4クオーター制で、グラウンドの大きさは100×55m。五輪用に現在検討されているルールは、1チームが6人(グラウンド内)、審判は3人、時間は8分×4クオーター、グラウンドサイズは70×36mとなる。
2022年に米国のアラバマ州バーミングハムで開催されたThe World Gamesの日本の成績は、参加8カ国中、男子は3位、女子は6位だった。
日本に好機
10人制の通常ラクロスでの日本の成績は、男女とも5位(女子は2022年、男子は2023年の世界選手権大会)。通常ラクロスでは、北米の先住民族ホーデノショーニー(世界3位)やイングランド、ウェールズ、スコットランドがそれぞれ1カ国扱いされているが、ロス五輪でそれらが米国とカナダ、英国として統一されれば、日本のメダル獲得のチャンスがより近づく。
日本のラクロスの歴史は、1986年に慶應義塾大学の学生が始めたのが最初だ。日本ラクロス協会(JLA)の佐々木裕介理事長はその創部のメンバーの1人で、米国のジョンズホプキンス大学にラクロス留学した経験も持つプレーヤー出身だ。ラクロスがロス五輪の正式種目に決まったタイミングで率直な感想を求めると、「今でもLacrosse Makes Friends. というJLAの創設スローガンにとても魅力を感じている。他大学の仲間と1980年代後半、日本ではまだ何もないところから学生連盟を立ち上げラクロスの普及に奔走し、米国ジョンズホプキンス大学にラクロス留学して、そこで一生ものの海外の友人を得て、人生がより豊かになった。今も37年前も変わらない(ラクロス開拓期の)DNAを未来にもつないでいきたいと思っている」と答えた。佐々木理事長の妹も学習院大学のラクロス部出身で在京放送局のキャスターを務めている。
今後の予定
日本では今後、JLAが日本オリンピック委員会(JOC)に正式加盟し、IOCの統率下で28年の五輪出場に備えることになる。五輪出場選手の総数は制限があるので、ラクロスは予選を経て出場参加国が絞られることになる。五輪用ラクロスの6人制ルールも28年までに変更、改良される。
直近の世界順位は以下の通り。
男子(2023年)
- 米国
- カナダ
- ホーデノショーニー(旧イラコイ・ナショナル)
- オーストラリア
- 日本
女子(2022年)
- 米国
- カナダ
- イングランド
- オーストラリア
- 日本
筆者:海藤秀満(JAPAN Forwardマネージャー)