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福島県の浜通り地域など15市町村に新たな産業基盤を構築する国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」の成果発表会が2月28日、東京都内で開かれた。この地域は、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けた。発表会では、原発の廃炉関連や成長が見込まれる宇宙分野の計4社が、半導体開発など最新の取り組みをアピールした。
廃炉関連では大熊ダイヤモンドデバイス(札幌市)が「ダイヤモンド半導体」の開発について説明した。原子炉内に残った燃料デブリの取り出しには、燃料の再臨界を観測する必要がある。既存の半導体では放射線で動作不良を起こす可能性があるが、高線量下でも正常に機能するという。
ダイヤモンド半導体は、電気自動車(EV)の高速充電などでも活用が見込める。大熊ダイヤモンドデバイスは、福島県大熊町で令和6年度から世界初のダイヤモンド半導体工場の建設を始める。星川尚久代表は「震災を通じ技術を集積した。日本の次世代半導体産業を創造する」と意気込みを語った。
廃炉関連では同県南相馬市に事業所を置くマッハコーポレーション(横浜市、赤塚剛文社長)も、人工衛星に搭載するカメラのノウハウを生かした、高い放射線に耐えられる特殊なカメラを紹介した。
また、宇宙分野ではエレベーションスペース(仙台市)が地球に帰還可能な人工衛星について報告した。小型衛星に顧客の素材などの荷物を搭載し、低軌道上で実験を行った後、地球に戻して引き渡すサービスを提供する。宇宙空間特有の微小重力や真空、熱といった環境が荷物に与える影響を直接観察することができるという。同社の小林稜平最高経営責任者(CEO)は「浜通り地域はポテンシャルがあり、日本の宇宙産業の一大拠点になり得る」と強調した。
このほかアストロエックス(福島県南相馬市、小田翔武CEO)は成層圏の気球からロケットを発射し、人工衛星を宇宙に送る技術について披露した。12年には、年間打ち上げ50機を目指すという。
筆者:中村智隆(産経新聞)