カナダ西部で開かれたG7サミットが閉幕した。包括的な首脳宣言は見送られた。米国がロシアを非難する文言に反対し、米欧間の溝が埋まらなかった。
G7 Canada Trump Carney Ishiba

Leaders of the G7 nations pose for a commemorative photo at the G7 Summit in Kananaskis, western Canada on June 16. (©Kyodo)

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カナダ西部で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)が閉幕した。

国際経済が米国の関税政策で混乱し、イスラエルとイランの交戦で世界情勢が一段と緊迫する中、包括的な首脳宣言は見送られ、ウクライナ情勢に関する共同声明も出せなかった。

米国がロシアを非難する文言に反対し、対露制裁強化の必要性などを巡り、米欧間の溝が埋まらなかったためだ。極めて残念な結果である。

G7サミットの討議に臨むトランプ米大統領=6月16日、カナダ西部カナナスキス(代表撮影)

今回は1975年にカナダ以外の日米欧の6カ国による首脳会議が始まってから50年という節目だったが、自由主義陣営による秩序の維持や合意形成の場であるG7の結束が揺らいだことを印象付けた。

中東情勢への対応のため初日で帰国したトランプ米大統領は、ホワイトハウスで国家安全保障会議(NSC)を招集した。途中離脱は、米軍の最高司令官としてやむを得ない。

むしろ問題なのは、トランプ氏がG7の価値をよく理解していないことである。

トランプ氏はカナダのカーニー首相との会談で、G7にロシアを加えていた「G8」からロシアが除外されたのは「重大な過ちだ」と語った。露の除外は、2014年にロシアがウクライナ南部クリミア半島を併合したためだった。中国がG7に加わる考えを「悪くない」とも述べた。これらは、専制主義国との対峙(たいじ)にG7を活用することをトランプ氏が想定していない発言ともいえる。

G7サミットの討議に臨む石破首相(奥左)ら。右端はウクライナのゼレンスキー大統領、奥右はベセント米財務長官=6月17日、カナダ西部カナナスキス(共同)

R日欧やカナダの首脳は、トランプ氏にG7の意義をしっかり理解させねばならない。

トランプ氏不在のまま、ウクライナのゼレンスキー大統領を交えた協議が行われたが、圧力の最大化でロシアに侵略戦争の終結を迫る断固たる姿勢を示すには、及ばなかった。

一方で、中東の平和と安定に関与し、イランの核兵器保有を容認しない立場を声明で示し、重要鉱物の供給網に関し個別の声明を出した。G7の存在感をギリギリ保ったといえよう。

カーニー氏は「われわれは世界がさらに分断され、危険になる歴史の転換点にいる」と述べた。未曽有の混乱と危機の時代だからこそ、G7に求められる役割は大きい。米国をつなぎ留め結束を堅持する責務が日欧にはある。

2025年6月19日付産経新聞【主張】を転載しています

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