
イランの首都テヘランで、カタールの米軍駐留基地に向けた報復攻撃を祝う人たち=6月23日(WANA提供、ロイター=共同)
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トランプ米大統領がSNSへの投稿で、交戦してきたイスラエルとイランが「完全で全面的な停戦に合意した」と発表した。
米メディアは、カタールが停戦案を仲介したことや、6月25日午前0時(日本時間同午後1時)に戦争が正式に終結する合意だと報じている。
トランプ氏は停戦が「永遠に続くと思う」としたが、不透明感は残っている。イスラエル、イラン双方は最大限の自制を働かせて停戦を順守し、戦争を終わらせてもらいたい。

イスラエルはイランの核武装を阻止するとして、13日からイランの核施設などを空軍機などで攻撃した。イランも弾道ミサイルなどで反撃したがイスラエルが優勢を保っていた。米国もイランの核施設を戦略爆撃機などで攻撃した。
イランは濃縮度を60%に高めたウラン燃料を貯蔵している。短期間で核兵器級の濃縮度90%まで高め、核兵器をつくることができるとされる。イランは国家としてイスラエルの生存権を認めていない。イランが核兵器を保有すれば、直接または親イラン武装勢力によってイスラエル攻撃に使用され、核戦争が勃発する恐れがある。
トランプ氏は米軍の攻撃直後の演説で、イランに「平和か悲劇か」と早期の和平を迫った。今回の停戦が実現すれば、武力行使を躊躇(ちゅうちょ)しなかったトランプ政権が、イラン指導部を追い込んだともいえる。

ただしイランの出方には警戒を要する。一方的に叩(たた)かれたイランの軍部や革命防衛隊には報復の念を募らせている勢力があるだろう。親イラン武装勢力もそうである。軍事攻撃やテロ攻撃があってもおかしくない。
日本を含む世界の原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡をイランの強硬派が封鎖したり、米軍艦船や西側のタンカーを攻撃したりする懸念は残る。日本も欧州もイランへ自制を働きかけるべきだ。
最も重要なことは戦争の原因をなくすことだ。イランは核武装しないと宣言し、国際原子力機関(IAEA)の査察に協力し、ウラン濃縮施設の破壊を受け入れてもらいたい。高濃縮ウランを隠匿しているならIAEAに差し出すべきだ。イラン国会で一部が主張する核拡散防止条約(NPT)脱退など論外である。
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2025年6月25日付産経新聞【主張】を転載しています
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