奈良県の老舗酢醸造元「ミヅホ」は、長年培ってきた醸造技術をいかし、クラフトビネガードリンク「saku(サク)」を開発した。人気が高まるノンアルコール市場に、「食事と一緒に楽しめる飲み物」として売り込む同社の新機軸だ。
vinegar 1

酢造りの工程を蔵で説明する大西佑亮さん=奈良県橿原市

This post is also available in: English

奈良県橿原市の老舗酢醸造元「ミヅホ」は、長年培ってきた醸造技術をいかし、米酢や黒酢をベースにしたクラフトビネガードリンク「saku(サク)」を開発した。人気が高まるノンアルコール市場に、「食事と一緒に楽しめる飲み物」として売り込む同社の新機軸だ。きっかけとなったのは、跡継ぎの大西佑亮さん(36)の「伝統を守りたい」という強い思いだという。

同社は明治27年創業。木桶で発酵させるという江戸時代から続く伝統製法で約7カ月間かけて酢を醸造する。木桶は社有の東吉野村の山から切り出された吉野杉を使用したもので、この中でじっくりと寝かせることでまろやかな味わいに仕上がる。

大西さんは、家業を取り巻く厳しい状況から父の甚吾社長に「継ぐな」と言われ、長らく異業種の自動車業界で働いていた。転機は令和5年、大正から昭和初期に建てられた主屋と醸造施設が国の登録有形文化財に指定されたことだ。その価値や伝統を次代に引き継ぐ必要があると感じて退職し、実家を継ぐことに。

クラフトビネガードリンク「saku」

C20世紀のアメリカの禁酒法時代にアルコールの代替品として酢をベースにしたドリンク「シュラブ」が親しまれた歴史を参考に、新たなビネガードリンクを打ち出そうと構想を温めた。

昨年に県のブランディング事業の業務委託を受けた中川政七商店の「経営とブランディング講座」を受講し、商品の発信の方法などを学び、改良を重ねた。

伝統技法の酢を使ってできあがった新ブランド「saku(サク)」は、兵庫県のイタリア料理人が監修にあたり、名は酢に含まれる「酢酸(さくさん)」から付けた。

ドライマンゴーやドライいちじくなどを使ったフルーティーな米酢ベースの「saku Komezu Fruity(こめずフルーティ)」と、黒酢をベースにシナモンやカルダモン、バニラビーンズなどのスパイスが香る「saku Kurozu Spicy(くろずスパイシー)」の2種類があり、炭酸水などで希釈して楽しむ。

フルーツやスパイスなどが複雑に絡みあった味わいで、「ノンアルコールながら酒を飲んだときのような気持ちになれる」と大西さん。「健康によいから酢を飲む、のではなく、おいしいから飲みたいがコンセプト。ビネガードリンクを通して、守られてきた醸造方法や伝統を知るきっかけとなれば」と期待を寄せる。

1本300ミリリットル入り2970円(税込み)。全国の中川政七商店直営店やsaku公式オンラインショップで購入できる。

(産経新聞)

This post is also available in: English

コメントを残す