鳥羽水族館(三重県鳥羽市)は12月17日、同館で飼育していたスナギンチャクが新種だったと発表した。和名は「ヤドカリスナギンチャク」。見た目が映画「エイリアン」に登場する地球外生命物体「ゼノモーフ」が孵化(ふか)後に人間の顔に襲いかかる「フェイスハガー」に似ていることから学術名は「エピゾアントゥス ゼノモーフォイデウス」と名付けられた。論文が12月、英国科学誌に掲載され確定した。
新種は平成26年1月24日、同館の森滝丈也学芸員が尾鷲市沖の熊野灘で採取。2年後に瀕死(ひんし)状態になり、琉球大大学院に引き取られ検査したところ、新種であることが分かった。標本は現在、国立科学博物館筑波研究施設(茨城県)に収蔵されている。
新種は約5~10センチの大きさで、深海底に生息し、ヤドカリと共生。ヤドカリが背負う巻き貝の上に付着し、エイリアンの「ゼノモーフ」のように徐々に貝殻を溶かしながら成長し、最終的には貝殻は溶けてなくなり、ヤドカリの成長に合わせて形作られた新種の中にヤドカリが住み着くなどお互いに共生して生きる。ヤドカリが死滅したあとは新種だけが生き残る。
同館では平成22年から29年に同様のヤドカリスナギンチャクを計6個体採取し飼育していた記録があるが、現在は飼育していない。
森滝学芸員は「熊野灘では新種が多く、これまでもゴカイ類など9種の新種を採取することができた。まだまだ新種があると思うので、今後の研究が楽しみだ」と意欲的に語った。