双十節は中華民国の誕生を記念する日です。孫文先生が1911年10月10日の辛亥革命により、中華民国を建国しました。今年は109回目です。当時の中華民国は、アジア初の民主共和国でした。
しかし、民主主義の理想は、中国大陸では実現せず、中華民国政府が1949年に台湾に移って以降、台湾の人々が無数の困難を乗り越え、一歩一歩、民主化を実現させてきたのです。
台湾はこれまで7回にわたる総統の直接選挙が行われました。2016年の総統選挙で3回目の政権交代となり、蔡英文総統が就任しました。今日の台湾は名実ともに民主主義社会になったといえます。
台湾の人々は一人一人が幸せに生きられ、自分たちのリーダーも直接選挙で選ぶことができます。これらはわれわれ台湾の誇りなのです。
他方、中国大陸では長年にわたり中国共産党政権が政治の民主化を拒否し続け、自由と民主主義を求める人々の行動を反乱だと決めつけ、弾圧してきました。近年は香港へも弾圧を拡大し、その攻撃の矛先は台湾の民主主義にも向けられています。
中国は「一国二制度」の受け入れを台湾に迫っていますが、台湾の蔡英文総統は「一国二制度を断じて受け入れない」と明確に主張しています。
今年初め、中国の武漢で新型コロナウイルスによる感染症が発生した際、台湾は未加盟の世界保健機関(WHO)に頼ることができず、自分たちの力だけで切り抜けなければなりませんでした。しかし、世界で感染が蔓延するなか、台湾は感染の封じ込めに成功しました。
これは、台湾の自由、民主主義の透明な制度が、感染対策に優れていることを証明しています。
台湾は「善良なパワー」である、と蔡英文総統は述べています。世界中で感染が広がるなか、「Taiwan Can Help」、つまり「役立つ力」をめざし、実行してきました。台湾は医療物資が自給できるようになった後、一部を医療物資が切迫している国に支援しています。
台湾は4月に200万枚のマスク、5万着の医療用ガウンを日本に贈りました。また、台湾の民間からも「人の痛みをわが身のように」の精神で、日本を励まし、支援してきました。まさに「まさかのときの友こそ真の友」といえます。
台湾と日本は自由、民主の価値観を共有し、双方の市民の好感度も高く、最高のパートナーだといえます。特に台日間の貿易額も大きいので、日本の支持を得ながら台湾がCPTPP(包括的および先進的な環太平洋連携協定)などの多国間貿易協定に加盟できれば、必ず双方プラスになると信じています。
今年は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、多くの交流活動が中断しており、経済の発展にも大きな影響が出ています。本当に深刻な事態です。
しかし、感染症の流行もいつかは終息します。われわれはその日に向けて今から準備しています。感染が落ち着きましたら、われわれはこれまでの基礎の上に、台日の関係を深め、友好交流をつないでいきたいと、ここに決意を表明いたします。
著者:謝長廷(台北駐日経済文化代表処代表)