~~
国際報道を通じて国際理解に貢献した記者に贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」の2020年度の受賞者が2月24日、産経新聞副編集長の藤本欣也記者(57)と共同通信外信部次長の芹田晋一郎記者(48)の2人に決まった。
選考委員会は、藤本記者の受賞理由として、19年10月から20年10月まで香港に長期出張し、「習近平政権による『中国化』政策のなかで民主化を求めて苦闘する香港を取材、迫力のあるルポルタージュを生み出した」と評価した。
また、中国政府が20年6月末に香港国家安全維持法(国安法)を施行した際に執筆した「香港は死んだ」と題する記事は「香港メディアでも取り上げられるなど大きな反響をよんだ」とした。後に国安法で逮捕された香港紙、蘋果(ひんか)日報の創業者、黎智英(れい・ちえい=ジミー・ライ)氏らへの粘り強い取材も評価の対象となった。
藤本記者は早稲田大第一文学部卒。1990(平成2)年に産経新聞に入社し、香港、ブリュッセル、シンガポール、ソウルの各支局長や中国総局長を経て2019年10月から東京本社副編集長を務めている。
芹田記者は、中国公船の尖閣諸島(沖縄県石垣市)領海への侵入について、元中国海軍幹部へのインタビューで、08年の初侵入の2年前から「指導部」の指示に基づき計画されたものだったと明らかにした。
同賞は東京湾で事故死したマイルス・ボーンUPI副社長と上田碩三(せきぞう)電通社長をしのんで1950年に設けられた。本社記者の受賞は97年度の千野(ちの)境子シンガポール支局長以来。
◇
藤本記者の話「国安法の下、外国メディアと会えば危険が伴うにもかかわらず、日本の記者に思いを託してくれた香港の人々に感謝したい。香港は今、自由と民主主義を奪われ、受賞を喜べるような状況ではないが、私はこの受賞で新たな責務を負ったと考えている。自由と民主主義を失うとはどういうことなのか。香港の現実を見つめ、伝え続けていく」