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あまりに露骨な「人質外交」と言わざるを得ない。中国が自らそれを認めたようなものだ。
詐欺罪などで米司法省から起訴されていた中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟被告と、同省の間で司法取引が成立したことを受けて、中国当局が拘束していたカナダ人2人を解放したことである。
2人は、孟氏が米政府の要請でカナダ当局に拘束された直後の2018年12月、国家機密を探ったなどとして中国で拘束された。このうち1人は今年8月、懲役11年の判決を受けた。孟氏拘束に対する報復とみられる。
政治的な駆け引きや報復目的の身柄拘束は著しい人権侵害だ。国際社会に責任を持つ大国のやることではない。2人の解放は当然だが、本来これは司法取引があろうがなかろうが関係なく、もっと早く実行すべきことだった。
中国国内に滞在する外国人を拘束し、外交圧力や取引材料にするのは中国の常套(じょうとう)手段である。国際社会は、司法に名を借りた野蛮な振る舞いを許してはならない。
米司法省は司法取引の理由について、孟氏が「詐欺計画で中心的役割を果たした責任を認めた」と説明した。来年12月まで起訴を猶予し、その間に違反行為がなければ起訴を取り下げる。カナダで保釈中だった孟氏は帰国後、「偉大な祖国と人民、共産党と政府の思いやりに感謝する」と述べた。
中国外務省は孟氏の拘束について、「中国国民への政治迫害事件だ」との談話を発表した。孟氏を解放するまでカナダ人の拘束を解かなかった中国こそ、政治目的で人権を蹂躙(じゅうりん)したといえないか。
今回の司法取引は、バイデン米政権が、2人の解放を外交の最優先課題とするカナダのトルドー首相の強い要望を受け入れて決着を図ったものだ。拘束から3年近くが経過し、解決までにさらに3年かかるとの見通しもあった。人道上の配慮もあったのだろう。
懸念するのは、これを成功体験と捉える中国が、外交問題が起きるたびに相手国の人間を恣意(しい)的に拘束する恐れがあることだ。中国は2010年、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をめぐり、日本人4人を拘束した。これとは別に今も7人が拘束されている。日本政府は中国に対し、審理の公開と即時解放を求めていくべきだ。
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2021年9月28日付産経新聞【主張】を転載しています