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世界銀行のランキングで中国を優遇した不正操作をめぐり、関与が指摘された元世銀幹部で、現在は国際通貨基金(IMF)の専務理事を務めるゲオルギエワ氏が続投することになった。
IMFが同氏の疑惑を立証できず、10月11日の理事会声明で続投への支持を表明したためである。
すっきりしない結論だ。世銀の調査では当時のキム総裁や最高経営責任者(CEO)だったゲオルギエワ氏の関与が指摘された。直接的な証拠がないという理由でIMFが続投を決めても、疑惑が完全に晴れたとは言い切れまい。
もっとも、同氏らの関与の有無とは別に、この問題で最も懸念すべきは中国の行動だ。自国の意に沿うよう国際機関の運営に介入する。かねて指摘される中国の独善的な振る舞いである。
同様の実態は他の国際機関にもあるのではないか。あらゆる国際機関は、特定国による不当な介入への警戒を強め、公正な組織運営が担保されるよう透明性を高めるなどの対応策を取るべきだ。
不正があったのは、企業活動のしやすさを国・地域別に順位付けした年次報告書だ。2017年秋に公表された18年版で、当初85位だった中国の順位が78位に引き上げられた。
当時の世銀は増資交渉で中国の支援を必要としており、順位の低さに不満を持つ中国の意を受けた上層部が担当部署に圧力をかけたという。世銀は不正発覚を受け、この報告書の廃刊を決めた。
ゲオルギエワ氏は関与を全面否定していた。これに対し、米国や日本はIMF理事会の協議で、専務理事の続投承認は時期尚早と主張していたが、証拠が確認できなかったため容認したとされる。
重要なのは、世銀やIMFが今後の組織運営で、不当に中国を優遇していないと納得させられるかどうかである。国際社会は厳しく監視しなくてはならない。
最近は多くの国際機関で中国の台頭が目立つ。ポストの獲得だけでなく、組織運営に影響力を行使するのも常套(じょうとう)手段だ。中国寄りとされる世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、新型コロナウイルス禍の初期対応のまずさに目をつむって中国を称賛したことは記憶に新しい。こうした動きを放置すれば、国際秩序が揺らぐだけでなく、世界の発展を阻害することを再認識すべきである。
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2021年10月15日付産経新聞【主張】を転載しています