FILE PHOTO: People walk past one of the entrances of Beijing No. 2 Intermediate People's Court where Australian writer Yang Hengjun is expected to face trial on espionage charges, in Beijing

FILE PHOTO: People walk past one of the entrances of Beijing No. 2 Intermediate People's Court where Australian writer Yang Hengjun is expected to face trial on espionage charges, in Beijing, China May 27, 2021. REUTERS/Carlos Garcia Rawlins/File Photo

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中国で服役中の70代の日本人男性が2月、北京市内の病院で病死していたことが分かった。

 

男性は2015年に北京で拘束され、スパイ罪で懲役12年の実刑判決を受けた。どのような行為が罪に問われたのか。肝心の点が明らかにされないまま、中国で他界したことになる。

 

罪状を公にしないまま人身の自由を奪ったうえに死に至らしめたことは、司法に名を借りた重大な人権侵害である。断じて許すことはできない。

 

男性はかつて航空会社に勤務し、その後コンサルタントとして日中間を往来していたという。拘束の経緯も理由も不明である。

 

密室の裁判で弁護が許されたかどうかも分からない。民主主義国の司法手続きではあり得ない。男性がなぜスパイ罪に問われ、服役したのか。中国当局は直ちに明らかにすべきであり、日本政府は強く開示を迫るべきだ。

 

上海では昨年12月、50代の別の日本人男性が中国当局に拘束されていたことも明らかになった。スパイ行為に関与した疑いがかけられているという。

 

 

習近平政権が14年に反スパイ法を施行後、中国では日本人を含む外国人を拘束するケースが相次いでおり、日本人の拘束はこれで16人となる。うち9人が懲役3~15年の実刑判決を受けたが、いずれも何が違法行為に問われたのか、詳細は明らかになっていない。

 

中国企業「華為技術」の孟晩舟副会長が18年にカナダ当局に逮捕された際、中国外務省は「理由を示さないままの身柄拘束は人権侵害だ」とカナダ当局を批判した。二枚舌とはこのことだろう。中国は日本人の拘束や判決理由の詳細を明らかにすべきである。

 

日本政府が亡くなった男性の救済をどこまで本気で試みたかという点にも疑問が残る。邦人保護に当たる在外公館は中国側に事実関係を厳しくただしたのか。

 

松野博一官房長官は2月17日、亡くなった男性について「人道上の観点から早期帰国を認めるよう働きかけてきた。誠に遺憾であり、抗議した」と述べた。50代男性についても上海の日本総領事館が早期解放を求めているという。

 

政府の沈黙は国民の理解を遠ざける。70代男性はなぜ亡くなったのか。上海での男性の拘束理由は何か。政府は強く中国側に迫り、交渉の経緯を公にすべきだ。

 

 

2022年2月20日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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