~~
岸田文雄首相は3月26日、米国のエマニュエル駐日大使とともに被爆地・広島市の平和記念公園を訪れ、慰霊碑に献花した。ウクライナに侵攻したロシアが核兵器の使用をちらつかせる中、日米同盟の結束を改めて確認するとともに、核使用に強く反対する姿勢を示した。ただ、日本は中国や北朝鮮の核の脅威にも直面しており、首相が掲げる「核兵器のない世界」の実現は容易ではない。
「ロシアによる核兵器使用の可能性が現実の問題として懸念されている。核を含む大量破壊兵器の使用は絶対にあってはならない」
首相は26日、大使との会談で強調した。合わせて、「被爆の実相に触れていただいた。国際社会に強いメッセージになる」と訪問を評価した。大使はオバマ元大統領の首席補佐官を務めており、平成28年にオバマ氏が現職大統領で初めて広島を訪問したときに作った折り鶴なども見学した。
広島が地元の首相は核廃絶に強い思いを抱いてきた。バイデン大統領とも1月のテレビ会議形式の会談で「核兵器のない世界」に向けて共に取り組んでいくことを確認していた。
だが、国際的な核軍縮の取り組みは暗礁に乗り上げている。ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領は核兵器を運用する部隊に戦闘警戒態勢へ移行するよう命じた。中国は核弾頭の増産を進め、北朝鮮も核保有の野心を隠さない。
首相とバイデン氏が出席した24日の先進7カ国首脳会議(G7サミット)ではロシアの核兵器使用の脅威に警告する声明を発表した。首相と大使の広島訪問は、日米連携の下でロシアの核使用を許さない姿勢を示す狙いがある。
「ウクライナ情勢は核兵器のない世界を目指す上で、道のりの険しさを改めて突きつけている」
首相は記者団に厳しい表情で語った。
筆者:岡田美月(産経新聞)