焼肉、ピザ、ラーメン…。幸せを感じる数々。でも、食べた後には油や塩分の摂りすぎが気になる。「ツジツマシアワセⓇ」で栄養バランスと幸せを両立する取り組みがスタートした。
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ツジツマシアワセのHPより

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好物を食べて罪悪感を覚える経験は誰もがある。せっかくの「幸せ」をネガティブに思っては台無しだ。このため、4つの栄養素・食材に着目して1週間程度で栄養バランスをとる「ツジツマシアワセ」の取り組みが日本の大手食品メーカーなどのタッグで可能になった。

健康課題に直面する前に

「まあいっか。があるから、人生は楽しいんだ」。

2023年11月、栄養バランスを考えて食べることの重荷を軽くするウエブサイトが立ち上がった。その名も「ツジツマシアワセⓇ」(楽しく栄養バランス普及プロジェクト)だ。

味の素、江崎グリコ、キッコーマン、マルハニチロ、明治など大手食品メーカーと料理レシピサイト運営会社エブリーの6社でスタート。2024年7月にサイトを大幅リニューアル、今では参加企業は計15社に増えた。

設立当初からのメンバーである味の素でプロジェクトの事務局を務める山口卓也・食品事業本部マーケティングセンター・戦略プロジェクトグループマネジャーは「人生100年時代、健康に過ごすことが大切だが毎日、食事バランスに気を付けるのは負担だ。簡単に日々、栄養バランスをとり健康寿命を延ばすために立ち上がった」と話す。

ターゲットは、現在はまだ将来の生活習慣病予防のために行動を起こしていない健康な層だ。健康課題を抱える前に生活習慣病にならないような生活を送ってもらうことで、健康寿命を伸ばすことにつなげる。山口さんは「解決すべき課題が顕在化していないこの層へのアプローチがこれまで手薄だった」と指摘する。

「ツジツマシアワセ」で笑顔になる生活を提案する(同HPより)

栄養プロファイリングが裏付け

「食べたいものを食べることほど、幸せなことはない。栄養のツジツマあわせで、取り戻せばいい」

これを実践するための仕組みが、「栄養プロファイリングシステム」(JANPS)だ。日本の食文化に即して野菜、タンパク質、飽和脂肪酸、塩分の4つの栄養素・食材に着目して、科学的に評価している。

一食分の献立を4つの栄養素・食材に関し設定した栄養目標値に基づきを算出し、これを上限にして点数化。提案する献立の各栄養素のポイントを合算して合計点を出し、100点満点に換算している。野菜、タンパク質は多いほどスコアが高く高評価となる。一方、塩分や飽和脂肪酸は低いほど高評価となる。

栄養評価結果が生活者に一目でわかるように「野菜よし!」「たんぱく質よし!」「飽和脂肪酸よし!」「塩分よし!」「栄養ゴールデンバランス」の5つのマークを設定した。

各献立において4つの栄養のスコアの合計が75点以上で「栄養ゴールデンバランス」となり、「野菜よし!」「たんぱく質よし!」で野菜やタンパク質が十分な量があることを示し、「塩分よし!」「飽和脂肪酸よし!」で1食の上限値内に塩分、飽和脂肪酸が収まっていることを示した。

提供する献立は3000種類を超える。栄養の数値もあるが、このマークで各メニューの特徴が一目でわかるように「見える化」した。

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食べて「幸せ」になった後は?

使い方は簡単だ。サイトを開いて、「野菜が少し不足している」や「あぶらっこい食事が多い」など、最近の食生活で気になる点をチェックすると、「ツジツマをあわせる」献立が幾つも提示される。日本では海外に比べ、家で調理する頻度が多い。1食栄養バランスが偏っても、家で作る食事で1週間でツジツマを合わせればよい。

「1週間は一つの目安。一般的に栄養素の摂取量は日によって上下するため、栄養バランスは短くても1週間程度でツジツマを合わせれば十分と言える」と山口さん。

ハンバーガーを食べた後は…

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「野菜よし!」のロールキャベツで不足した野菜を補う(同HPより)

日本版栄養プロファイリングが誕生

欧米の栄養プロファイリングモデルは、特定の栄養素の含有量で評価し、食品企業が出荷するパッケージ食品の栄養バランス改良に注目していたため、日本のように主菜、副菜などで構成する献立の評価には対応していなかった。定番調味料の醤油や味噌、カレールウなど単品で食べることを前提にしていないものも一律に評価され、日本の食品は栄養評価が低くなりがちだった。このため、2021年、JANPSが日本の食文化や栄養課題に沿って開発。昨年10月には、国立健康・栄養研究所が日本版栄養プロファイルモデル(加工食品・料理版)を開発した。食品栄養の「見える化」がさらに進むとみられる。

山口さんは「JANPSを社会実装したのがツジツマシアワセになる。将来的にはコンビニエンスストアなど流通業界や外食業界の参加も実現し、認知度をあげ、生活者が無理なく、楽しく、栄養バランスのよい食生活を実現できる社会を創っていきたい」と話している。

ラーメンで子どもとシアワセしているという山口さん(杉浦美香撮影)

筆者:杉浦美香(Japan 2 Earth編集長)

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