ウクライナ戦争:米国は侵略国ロシアに配慮すべきではない
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トランプ米大統領(右)と会談する石破首相=2月7日、ワシントンのホワイトハウス(写真は首相官邸提供)

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Ukraine War: US Sympathy for Aggressor Russia is Unforgivable

ウクライナ戦争:米国は侵略国ロシアに配慮すべきではない

実に衝撃的な「トランプ劇場」が始まった。世界はハラハラドキドキさせられているのではないか。4年目に突入したウクライナ戦争を終わらせるため、米国のトランプ政権が繰り広げている外交交渉のやり取りのことである。

トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が2月28日、ワシントンのホワイトハウスで激しい口論となり、予定されていた鉱物資源の権益をめぐる合意文書への調印が見送られた。その模様は世界中に生中継された。ドラマのような前代未聞の光景に、記者(内藤)も絶句した。

その後、舞台は欧州に移った。米国に頼ることはできないとの認識を持った欧州諸国が、欧州の再軍備計画を発表し、ウクライナに寄り添う姿勢を示した。欧州には、親ロシア的対応をみせるハンガリーのような国もあり、一朝一夕には再軍備は進まないだろう。しかし、重要なのは、トランプ氏の衝撃が欧州自らに覚醒を促した点だ。

ウクライナ側も冷静になり、米国の支援がなければロシアと長期にわたる戦争を継続することはできない現実を前に、停戦受け入れの用意があると表明した。これを受け、先の首脳会談後、停止していた対ウクライナ軍事支援を米国は再開した。ロシア側も米側と協議に応じる姿勢を示した。

ホワイトハウスで会談するトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領。和平交渉を巡り激しい口論となった=2月28日(ロイター=共同)

その予測不能なスピードある展開は、不謹慎かもしれないが、まるでシェークスピア劇のようだ。ロシアのプーチン大統領がどんな手を打つのか、仮に停戦となって本当に停戦が守られるのか。筋書きのないリアルなドラマの結末からまだまだ目を離せない。

上の英文(日本語訳)は、英語ニュース・オピニオンサイト、JAPAN Forward(JF)が3月3日掲載した本紙の主張記事の見出しである。

同記事は、米国とウクライナの首脳会談が決裂したことや、それに先立つ国連総会ではロシアによる侵略をめぐる決議案が採択された際、米国がロシアと北朝鮮、ベラルーシなどとともに反対票を投じたと指摘。「米国による行動は極めて残念だ」「米国にはウクライナの安全を保証する責務があることを忘れてはならない」などとトランプ政権に苦言を呈した。

批判はメディアの本分である。決して悪いことではない。しかし、ウクライナは、当然ながら米国ではない。さらに、同記事の米国批判は、米国に依存していながら理想ばかりを唱え、防衛面で独立しようとしない日本の姿とダブってみえたのは私だけか。

敗戦後、日本は米国の庇護(ひご)の下、空想の平和世界を作り上げ、夢の中を生きている。だが世界は、核兵器をはじめとする軍事力で自らの国益を追求する危険な時代に突入した。ロシアだけではない。国家基本問題研究所によると、新しい衛星写真分析などから中国が2018年以降、日本のミサイル防衛を突破できる新型核ミサイルの配備を着々と進めている実態が改めて明らかになった。

日本のメディアは、米国批判や印象操作ではなく、暗殺から逃れたトランプ氏が何を目指しているのか、正確に伝えることが何より重要だ。そうしなければ、なぜ同氏が選ばれたのか、多くの日本人は理解できないだろう。それは同盟国としての悲劇である。

日本が生き残る道はどこにあるのか。日本は、早く夢から目覚めて自らに向き合い防衛力を高め、真の独立国家の道に歩み出すことが求められている。

「トランプ劇場」は開演したばかりだ。ウクライナ戦争だけではない。中国との対決や関税戦争、さらには、グリーンランドの領有やパナマ運河の返還要求といった続編がある。日本は何を国益として追求していくのか、日本の議論と歩みを世界に伝えていきたい。

筆者:内藤泰朗(JAPAN Forward編集長)

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2025年3月17日付産経新聞【JAPAN Forward 日本を発信】を転載しています

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