令和6年の出生数が国の推計よりも14年も早く70万人を割り込み、急速な少子化の進行が改めて浮き彫りとなった。背景には経済的な不安で結婚や出産に踏み切れない若者が増加している現実があり、専門家は若者の経済状況改善を訴える。
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令和6年に生まれた子供の数(出生数)が国の推計よりも14年も早く70万人を割り込み、急速な少子化の進行が改めて浮き彫りとなった。背景には経済的な不安で結婚や出産に踏み切れない若者が増加している現実があり、専門家は若者の経済状況改善を訴える。

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が令和5年にまとめた将来推計人口(中位推計)は、6年の日本人のみの出生数を75万5千人と見込んでいた。初めて70万人を割り込むのは、2038(令和20)年の69万2千人になるとの想定だった。

日本の社会保障制度の多くは現役世代が支払う社会保険料で賄う「賦課方式」を採用している。このまま急速に少子化が進行すれば、現役世代の負担増加に留まらず、社会保障財源が逼迫(ひっぱく)し、制度自体の持続性も揺らぎかねない。

加えて、少子化傾向の反転への時間的猶予もない。現在、結婚適齢期を迎えている1990年代生まれの出生数は120万人程度で安定していたが、2005(平成17)年に110万人を割り込み、2016(平成28)年には100万人を下回るなど、今後適齢期を迎える世代の減少が予想される。

政府は「2030(令和12)年までがラストチャンス」と危機感を強めるが、反転攻勢に向けて有効な手は打てていない。

女性1人が生涯に産む子供の推定人数「合計特殊出生率」も、1・15と過去最低を更新した。背景には経済的不安で結婚や出産を諦める若者の増加がある。日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員は「低所得層ほど子供を持てない。最低賃金を引き上げるなど、これから結婚、出産を迎える若者の経済状況を改善することが急務だ」と訴える。

藤波氏は都市部だけでなく、地方でも出生率が低下しているとも指摘する。夫婦がともに働いて家計を支える形が一般的な家族の在り方となっているが、地方に優良な女性雇用が少ないことが影響している。藤波氏は「地方でも女性の雇用の在り方を見直していくことが求められる」と述べた。

筆者:長橋和之(産経新聞)

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