ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領と歩調を合わせることからも中国が目指す国際協調路線の欺瞞ぶりは明らか。国際社会は警戒を強めるべきだ。
Xi Jinping Li Qiang at NPC

中国全人代の開幕式に臨む習近平国家主席(左)と李強首相=北京の人民大会堂(共同)

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中国の全国人民代表大会が開幕した。李強首相は政府活動報告でトランプ米政権を念頭に「一国主義と保護主義」に反対する国際協調路線を訴えた。

だが、アジアで緊張を高めているのは中国である。自国を国際秩序の守護者のように見せかける偽善的な外交姿勢に惑わされてはならない。

李氏はこの1年、中国が「多方面の困難に直面した」としつつ、習近平国家主席を核心とする中国共産党の指導の下、困難を克服したと主張した。

「覇権主義と強権政治」に反対し、「世界の平和と発展に重要な貢献を果たした」などと自賛したが、台湾沖で軍事演習を重ね、東・南シナ海で力による一方的な現状変更を試みているのは中国自身ではないか。

台湾独立と外国の干渉に「断固反対する」とし、「兵の訓練と戦備」を一層進めるとも強調した。台湾と国際社会を威嚇するものだ。「祖国の平和的統一」との表現が昨年に続いて消えたことにも留意したい。

国防費として前年比7・2%増の1兆7846億元(約36兆8千億円)を計上した。経済が悪化する中、5%前後という成長率目標を上回る伸び率を維持し、軍拡路線を継続する。

開幕した中国全人代で、政府活動報告をする李強首相=3月5日、北京の人民大会堂(共同)

国防費の内訳を公表せず、周辺国・地域の懸念を高めているのも中国である。林芳正官房長官が「十分な透明性を欠いたまま軍事力を増強させている。中国の軍事動向はわが国と国際社会の深刻な懸念事項だ」と批判したのも当然である。李氏は習氏の「強軍思想」の貫徹を強調した。その目標こそ台湾併吞(へいどん)なのだと認識しておくべきだ。

習氏は9月の抗日戦争勝利記念日に合わせてプーチン露大統領を北京に招待しており、記念日に軍事パレードを挙行するとの報道もある。ウクライナを侵略するプーチン氏と歩調を合わせることからも中国が目指す国際協調路線の欺瞞(ぎまん)ぶりは明らかだ。美辞麗句を並べても習政権の危うい本質は変わらない。

李氏は国内問題で「矛盾・紛争の解消とリスク管理の取り組みを強化する必要がある」と語った。背景には無差別殺傷事件の多発もあろう。李氏は「公共安全の管理を強化する」と強調したが、さらなる自由の抑圧や中国在住外国人への監視強化に利用されないか、国際社会は警戒を強めるべきである。

2025年3月6日付産経新聞【主張】を転載しています

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