
ミャンマー東部ミャワディで、詐欺拠点から解放されて待機する外国人ら=2月17日(共同)
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ミャンマーの国際犯罪拠点で詐欺をさせられていた16、17歳の日本人高校生がタイ当局に保護された。
2人はネットで知り合った相手から誘われ、タイ国境付近のミャンマーの詐欺施設に連れ込まれた。闇バイトと気づかぬまま騙(だま)され、電話やネットで日本人を標的に詐欺をさせられていた。
当地には以前から中国を狙う詐欺拠点が存在した。幾度か中国当局などが摘発したが壊滅できずにいた。麻薬栽培を主産業としてきた地域で、ミャンマー国軍の統治が効いていない。
首謀者は中国人犯罪者だ。他国も標的にするようになり、外国人も監禁して詐欺をさせ、従事者が1万人を超す巨大な国際詐欺拠点に膨れ上がった。
日本人高校生の拉致監禁もそうした流れでなされた。タイ当局は2人を「人身売買被害者」と認定した。「海外で儲(もう)かる仕事がある」を餌に、若い同胞を海外の詐欺集団に売り払った日本人の組織が存在するのだ。
重大な問題だ。日本警察は人身売買ルートを徹底解明し、壊滅しなければいけない。これまで蓄積した特殊詐欺組織や反社会的集団の情報から、人身売買の実態を炙(あぶ)り出してほしい。
タイ当局は、高校生を連れ去った日本人の男を拘束し、犯罪組織の構成員としてミャンマーに滞在していた疑いがある日本人4人を拘束した。高校生は「日本人らしき人が10人ぐらいいた」と証言する。拠点からは1~2月に7千人以上の外国人が保護されたが、日本警察は各国と協力し、新たな日本人被害者の発見・救出と、人身売買を摘発することが責務だ。

詐欺の結果が悪いと暴行を受けるなどの実態が、解放された外国人の証言などで判明してきた。命にかかわる危険な環境だった。海外での高収入の仕事の誘いは闇バイトの疑いが強く、非常に危険だということを、特に若年層に周知する必要がある。タイやミャンマーなど当該地域への旅行者にも、犯罪拠点から日本人を含む外国人が狙われているという現実を伝え、自衛を促すことが大切だ。そのためにも海外の詐欺拠点がどこにあるかの情報がほしい。
それにしても外国人を巻き込む中国人犯罪者の巨大詐欺拠点の異様さは目に余る。世界の治安の悪化要因といえる。中国政府による一掃が急務だ。
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2025年2月26日付産経新聞【主張】を転載しています
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