海上自衛隊のP3C哨戒機に2日連続で異常接近した中国軍のJ15戦闘機は、いずれも沖ノ鳥島付近へ進出した海軍空母「山東」から発艦した。当時、別の空母「遼寧」が「第2列島線」を初めて越え、西太平洋で空母2隻が同時展開していた。
JF-Graphic 202506 Chinese Navy Aircraft Carrier Fleet (J)

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「40分、80分という時間を追従し、それも2日連続で起きた。そういう行動を故意に取っていると受け止めている」。自衛隊制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長は6月12日の記者会見で、中国軍機の行動について、こう分析した。

「冷や汗かく距離」

海上自衛隊のP3C哨戒機に2日連続で異常接近した中国軍のJ15戦闘機は、いずれも大陸から1500キロ以上離れた沖ノ鳥島付近へ進出した海軍空母「山東」から発艦した。

防衛省によると、最初の異常接近は7日。山東を発艦したJ15が1機で約40分間かけて複数回、左右に接近したり離れたりしながら後を追いかけ、機体の左側約45メートルの距離まで近づいた。8日は1機が約80分間かけて追従し、右側約45メートルまで接近。離れる際に前方約900メートルの場所を同じ高さで左から右へ横切った。この日は、別の戦闘機も追従に加わったという。

距離45メートルについて空自パイロットは「見知らぬ人が横に肩を並べて歩いてきたような冷や汗をかく距離感」と表現。当時、中国軍は空母2隻を初めて西太平洋へ同時展開しており、空自関係者は「ここは中国の空だと言わんばかりだ」と嘆息する。前方を横切る行為は乱気流によってエンジン異常を起こす危険もある。

P3Cは山東など計5隻に対する警戒監視中だった。海自機からは無線で「公海上の適正な任務飛行である」といった趣旨の交信を試みたとみられる。防衛省は交信内容を明かしていないが、山東とは安全距離を保っていたと説明している。

挑発繰り返す

中国軍機は近年、米軍機や同盟国軍機への挑発行為を繰り返している。今年2月には南シナ海上空でオーストラリア空軍のP8A哨戒機に対し、中国空軍のJ16戦闘機が約30メートルの距離に近づき、ミサイル回避用の火炎弾「フレア」を発射した。

また、米国防総省は2023年、中国軍機の異常接近が過去2年で180件以上あったと公表。搭乗員の顔が分かるほどの接近や米軍機前方を横切るなどの例があった。

当時、別の中国海軍空母「遼寧」が対米防衛目標ライン「第2列島線」を初めて越え、西太平洋で空母2隻が同時展開していた。明海大の小谷哲男教授(安全保障論)は「新たな海域に進出した中国軍による『正当な訓練を妨害するな』という牽制だと推測される。空母打撃群の運用態勢を整え、自信を付けつつあることの表れではないか」と話した。

筆者:市岡豊大(産経新聞)

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