内閣府が発表した死刑制度に関する世論調査の結果によると、容認の回答が約83%となり、5年前の前回調査より上昇した。
death penalty

東京拘置所の刑場の「ボタン室」から見た「執行室」(右奥)=平成22年8月27日(代表撮影)

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内閣府が死刑制度に関する世論調査の結果を発表した。

「死刑もやむを得ない」との回答は83・1%で「廃止すべきだ」は16・5%だった。

内閣府は調査方法が対面から郵送に変わったため、単純比較はできないとしているが、死刑容認の回答は5年前の前回調査より2・3ポイント上昇した。

死刑の世論調査は昭和31年に始まったが、容認の意見が廃止を大きく上回る傾向は変わっていない。調査は平成元年から5年ごとになり、容認が8割を超えるのは5回連続だ。死刑制度への国民の支持は底堅いものがあるといえる。

容認の理由(複数回答)は「死刑を廃止すれば被害者や家族の気持ちが収まらない」が62・2%と最多だった。次いで「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」55・5%、「廃止すれば凶悪犯罪が増える」53・4%などと続いた。

仮釈放を認めない「終身刑」を導入した場合の問いにも「廃止がよい」は37・5%にとどまり、「廃止しない方がよい」は61・8%だった。

日本弁護士連合会など廃止派は、「死刑廃止が国際社会の潮流だ」「制度には致命的な問題が複数ある」と主張するが、刑罰は国民の道徳観、死生観、宗教観、国家観と深く結びついている。一律に外国にならえばよいというものではない。

袴田巌さん

世論調査で「廃止すべきだ」は前回から7・5ポイント増えた。昨年10月に、静岡県一家4人殺害事件で確定死刑囚だった袴田巌さんの再審無罪が確定したことが影響した可能性がある。

袴田さんの事件をめぐっては、検察側の証拠開示の在り方など、現在の再審制度の不備が明らかになった。死刑は究極の刑罰である。内容の乏しい再審規定を整備するなど、厳正な刑事司法のもとで存続する制度であり続けたい。

30年前の地下鉄サリン事件、神奈川県座間市で起きた男女9人殺害事件、京都アニメーション放火殺人事件など、厳刑をもってしか償うことができない重い罪がこの世には存在する。

1995年の地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の指導者、麻原彰晃。2018年7月6日に東京で死刑執行された

日本は死刑制度を有する法治国家だ。裁判員裁判でも厳刑相当の事件には死刑判決が出されている。死刑制度の維持は、非道な犯罪を日本という国、社会、国民は許さないという強い決意を示すことでもある。

2019年の京都アニメーション放火事件では、実行犯の男を含む70人が死傷。2025年1月に死刑判決が確定した

2025年3月16日付産経新聞【主張】を転載しています

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