北海道新幹線新函館北斗―札幌間の開業時期が令和20年度末にずれ込むことが明らかになった。国土交通省が公表した報告書によると、さらに数年単位で遅れる可能性が出ている。
Hokkaido Shinkansen

新函館北斗駅に到着する北海道新幹線の車両

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北海道新幹線新函館北斗―札幌間の開業時期が令和20年度末にずれ込むことが明らかになった。

国土交通省が3月14日公表した有識者会議の報告書によると、さらに数年単位で遅れる可能性が出ている。

新幹線の札幌延伸は令和12年度末の開業を目指して工事が進んできたが、羊蹄山を貫通するトンネル工事現場で巨大な岩塊が発見されるなど、難工事区間が続出した。慢性的な人手不足も相まって8年以上延伸が遅れることになった。

延伸の大幅遅れによって、新幹線効果による旅客収入の大幅アップを見込んでいたJR北海道の経営を直撃するばかりでなく、沿線の再開発が滞り、北海道経済全体に悪影響を与えるのは確実な情勢だ。

JR北海道・根室駅に停車する車両(©Agnes Tandler)

北海道新幹線の延伸区間は羊蹄山など険しい山々が連なり、トンネルが8割を占めるなど着工前から難工事が予想されていた。「事前に地質の詳細を把握するのは困難だった」という関係者の説明はむなしく響く。

工期延長による事業費の大幅増も避けられない。国交省は3年前、当初計画の1兆6700億円から2兆3150億円に膨らむとの試算を公表しているが、最終的には総額3兆円を超えるとの見方も出ている。

いずれにせよ今後十数年は、札幌まで新幹線が延びないという現実をJR北海道だけでなく、国も道も沿線自治体も直視せねばならない。まずは、バス転換が決まっている並行在来線の函館線長万部―小樽間の存続・強化に舵(かじ)を切るべきだ。

国際的な観光地となったニセコを沿線に抱える同線は、冬季には外国人観光客を中心に山手線並みの混雑ぶりをみせている。全国的な運転手不足の中、バスへ転換するのは土台無理であり、観光列車を新設すれば収益アップを図れる。

高層ビル建設を柱とする札幌駅前の再開発事業も、大胆に見直さねばなるまい。駅前の一等地を新幹線延伸まで空き地同然で放っておくのは、札幌市にとってもマイナスだ。

JR北海道室蘭本線の小幌駅(©Agnes Tandler)

人口減少が急速に進む北海道に活気を取り戻すには、鉄道、バスといった公共交通機関を住民や観光客が使いやすいよう再編することも重要である。

新幹線延伸遅れを奇貨とし、国も自治体もJRも北海道再興へ知恵を絞ってもらいたい。

JR北海道花咲線の落石駅(©Agnes Tandler)

2025年3月16日付産経新聞【主張】を転載しています

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