トランプ米大統領がプーチン露大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領と、個別に電話会談した。プーチン氏は全面的な即時提示案は拒否、部分的攻撃停止を受け入れた。
Trump Zelenskyy Putin

(左から)トランプ米大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領、ロシアのプーチン大統領(AP=共同)

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トランプ米大統領が3月18日にプーチン露大統領と、19日にウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した。

米露首脳会談では、先に米国とウクライナが合意した30日間の全面的な即時停戦案について、プーチン氏は拒否した。露大統領府によると、トランプ氏はエネルギー関連施設への攻撃を30日間停止するよう提案し、プーチン氏は受け入れた。

ゼレンスキー氏もトランプ氏との会談で、エネルギー施設への攻撃停止に同意すると表明した。トランプ氏は戦争終結への動きが「本格化した」とSNSに投稿した。ゼレンスキー氏は「米国の指導力の下で、年内に恒久的な和平の実現が可能だ」と期待を示した。

だが、プーチン氏が全面停戦案を蹴ったのは極めて遺憾だ。トランプ氏には、部分的停戦となりうる今回の合意を、公正かつ永続的な平和への確かな第一歩とする責任がある。

米とウクライナの代表団は数日以内にサウジアラビアで会談し、黒海上での停戦案なども協議する。米露も23日に高官協議を開くが、交渉は困難が予想される。トランプ氏は、公約である早期停戦の実現を急ぐあまり、侵略者プーチン氏の言いなりとなってはならない。

今回の合意で、攻撃停止対象を巡る当事者間の食い違いが表面化した。米国とウクライナは、エネルギー施設と民間インフラが対象になると主張しているのに対し、ロシアはエネルギー施設のみと唱えている。

ロシア軍は、ウクライナの病院など民間施設への攻撃を続けている。一方でウクライナは、ロシアを悩ませた露領内の石油関連施設への反撃手段を封じられる。

ロシアによる無人機攻撃を受けた集合住宅で作業する消防隊員=3月23日、ウクライナ・キーウ(ロイター=共同)

それゆえ、今回の合意はロシアの方に利が大きいといえる。プーチン氏は、エネルギー施設への攻撃停止でトランプ氏の顔を立てつつも、ウクライナ侵略をあきらめていない。

ロシア軍は、ウクライナ軍が交渉カードとするため一部を占領してきた露西部クルスク州の完全奪還を急ぎ、ウクライナ東部でも攻勢をかけるだろう。

ただし、ロシアは経済的にも継戦能力の点でも、見かけよりも厳しい状況にある。トランプ氏が国際的に評価される和平を実現したいなら、対露交渉で圧力を用いることも必要だ。

2025年3月21日付産経新聞【主張】を転載しています

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