6月25日の定時株主総会でフジ・メディア・ホールディングスの社長に就任するフジテレビの清水賢治社長が、産経新聞の単独インタビューに応じた。
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産経新聞の単独インタビューに臨むフジテレビ・清水賢治社長=6月3日、東京・台場のフジテレビ(矢島康弘撮影)

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6月25日の定時株主総会でフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の社長に就任するフジテレビの清水賢治社長が4日までに、産経新聞の単独インタビューに応じ、元タレントが関与した一連の問題に関し、「長年にわたる人事の硬直性などに起因する」と述べた。長期にわたる、日枝久氏を中心とした社内体制からの脱却については「結果を見せていくしかない」とした。

主な一問一答は以下の通り。

――一連の問題をどう考えるか

「原因となっているものはフジテレビの長年にわたる人事の硬直性などに起因する同質性。おかしいと思うことをおかしいと誰かが口に出すことができていなかった」

――指名委員会等設置会社への移行について

「FMHの取締役は人数をかなり少なくして、独立性の高い社外取締役を過半にし、女性比率も上げ、多様性も高めた。基本的に指名委員会等設置会社が求めているようなガバナンスの透明性は、今回で達成できる。よりよいガバナンスとは何かを新しい取締役会で検討し、その上で必要と判断すれば移行する」

日枝氏影響「一切ない」

――40年以上取締役を務めた日枝久相談役が一切表に出ていない

「新役員体制に日枝氏の影響は一切ない。あとは結果を見せていくしかない。取締役会の定年制の厳密な運用、社外取締役の任期の制限、相談役制度の廃止などを明確にした。開かれた取締役会になり、そこでの議論を通じて会社の運営が絶えず外部から見えるようにしたい」

インタビューに応じるフジテレビ・清水賢治社長=6月3日、東京・台場のフジテレビ(矢島康弘撮影)

――米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」からの株主提案は受け入れなかった

「役員を選出する過程で考えていたのは、取締役として改革を実行するために必要なスキル。候補者は様々なステークホルダーの意見や推薦を基にこれまで当社と関係がなかった方を選んだ。株主提案の候補者も同じ選考プロセスに則って面談し、経営諮問委員会や取締役会で検討した。会社側で選んだ候補者によるチームのスキルに過不足があれば変えるつもりだったが、その合理的な理由がなかったし、コンパクトで実効性の高い取締役会を目指す方針を変えて増員する理由もなかった」

――不動産事業が利益を上げ、メディア事業に甘えを生んでいるとの批判もある

「サンケイビルは貸しビル業から、メディアグループの中の都市開発会社に変わった。観光事業はリゾート開発にも手を広げ、以前とは様変わりしている。今後はエンターテイメントと観光事業の連携も目指していく。グループとしての問題はメディアコンテンツ事業の利益率の低さ。それをドライブさせるのがコンテンツだ」

コンテンツ活用は反省から

――どうヒットを生むのか

「過去の反省から入ることになる。これまではコンテンツを十分に活用して利益を取り込んでこなかった。われわれは放送が役割と考えてきたが、もしコンテンツのビジネスを伸ばしたいと思っていたら、もっとできることがあった。しかし、テレビ放送したことで市場をさらに大きくできたものもあり、メディアの力がヒットを出す確率を上げる」

――コンテンツ企業になるためには

「従来のフジテレビは放送が主で、制作部門は放送を行うために存在してきた。このままでは、コンテンツ企業として成長しない。他の出口を求め、世界のマーケットを目指す考え方に変えたい。まず放送の番組枠ありきで企画を考えるのではなく、企画を考え、同時にどのような収益で投資を回収できるのか考えるべき。回収手段は動画配信、映画化、グッズ販売、ゲーム化、なおかつ地上波テレビでも使えるだろうかというくらい幅広く考えて、ヒットさせる方法を予測する。出口が地上波テレビだけではないことがより明確になれば、企画の幅も広がる」

――社長として最も重要なことは

「フジテレビという会社が成長しながら社会に貢献できること。利益を出すのは手段であって目的ではない。社会課題の解決とか、何らかの改善に貢献しなければ会社の存在理由がなくなる。それをやるためには成長していかないと、力は得られない」

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アニメからエンタメの本質

――アニメ番組の制作に携わってきた

「アニメは子供向けの番組と思っていなかった。子供は小さな大人。子供だましなど効かない。子供はエンターテイメントを極めて率直に評価してくれる。何が面白いのか、面白いとは何か。エンターテイメントの本質を見る上では、重要な経験だった」

――ビジネスとして学んだことは

「アニメにおける広告収入は、収入の一部でしかなく、商品展開など、最初からさまざまな収入を考えないといけない。草創期の話だが、人気アニメ制作プロダクションの制作費が増えすぎたことで、2次利用を前提にしてコンテンツの投資を回収するモデルになっていった。投資効率の価値観はそこで植えつけられた」 

画期的だった「ドラゴンボール」「まるちゃん」

――手掛けたアニメで思い出に残るのは

「画期的な原作だったのが『ドラゴンボール』と『ちびまる子ちゃん』。よさを生かすためには作り方を変えなければいけなかった。『ドラゴンボール』はスピード感が全く違った。新しい敵が現れた瞬間、次のコマでヒーローにバッサリ切られてしまう。普通ならもったいなくてできない。鳥山明氏の感覚は違った。そのスピード感にはまるともっとスピード感を味わいたくなる」

――「ちびまる子ちゃん」は

「舞台は本当にあくまでも日常。しかも原作者の心象風景でしかない。『さくらももこ』という人の目を通してだけ見ている世界で、その中で時間が止まっている。普通のアニメは動くことが大事で第三者の目線で物語を追いかけて見せるもの。自分の心の中を描くエッセイをアニメにするということはかつてなかった。だからこそ、あの心象風景に共感できる人は思いっきりはまっていく。制作チームには、さくらももこの心象に合うものを、彼女がどう思うかということをひたすら再現してほしいとオーダーした。脚本も全て同じ年代の女性作家にお願いした。同一の感覚を持てない人には作れないと考え、同一世代の同一時代を過ごした感覚を持っている人だけで作ることを徹底した」

――今回の事案で制作会社や系列局への対応は

「制作会社や系列局の皆様には極力迷惑をかけないよう、スポンサーに提供していただけない状況でも、制作費等の支出は維持している。フジテレビが苦しくても、パートナーやステークホルダーを守ことが責務だと思っている」

聞き手:高木克聡(産経新聞)

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