英国のデジタルロックのパイオニア、ケミカル・ブラザーズが、4月にリリースしたニューアルバム「ノー・ジオグラフィー」引きさげワールドツアーを行っている。JAPAN Forwardは開催中のフジロックフェスティバル(新潟県)の舞台裏で、トム・ローランドとエド・シモンズに、フジロックの印象と、日本人ラッパーNENE(ゆるふわギャング)とのコラボレーションについて話を聞いた。
フジロックフェスティバルについてどう思いますか?
エド:1999年に初めて来たときから、フジロックが大好きだ。愛すべきフェスティバル精神といったものが息づいていることに驚き、心温まり、そして参加できて光栄だと思う。多くのバンドが入れ代わり立ち代わり屋外で演奏する様々なフェスティバルで何度も演奏してきた。だが、ここでは参加者たちがキャンプし、一緒に食べ、同じ体験をしながら昼夜通してただ楽しむ。ステージに上がり観客にすべて自分たちで音楽を提供するというより、もうすでに存在しているフェス精神に貢献するという意味合いが強い。そして、この場所が美しい。毎回参加するたびに、標高が高いこの場所は異なった表情を見せてくれる。木々の緑や数時間ごとに変化する空の色は、本当に驚きだ。
トム:フジロックフェスティバルは、エドが言ったようにホント特別な場所さ。参加者たちは、もう一つの生活をすべて置き去りにして、来場してフェスに加わる。それは、英国のグラストンベリー・フェスティバルを彷彿とさせる。人々がある週末に同じ一カ所の場所に集結して一緒に時間を過ごす点で似ているよ。一方で、ここでは、違う体験ができる。他のフェスとは違う。エドが言ったように、他の多くのフェスでは、電話やタバコとかいったものをただ売るためのものだが、このフェスは精神が生きているようにみえる。何より、音楽を愛している人たちがこのフェスを動かしている。演奏していて楽しい場所だ。
ニューアルバム「ノー・ジオグラフィー」では、「イヴ・オブ・デストラクション」で日本のラッパーNENEをゲストボーカルに起用しています。NENEとのコラボはどのようにして生まれたのでしょう?
トム:ノルウェーの歌手、AURORA(オーロラ)と「イヴ・オブ・デストラクション」という曲を書いたんだ。確か、彼女とは、他にもう何曲か一緒にやったよ。俺たちが曲の中で、別な表現力を持つ異なった世界の違った声に変わったら、みんな驚くのではないかという思いつきのアイデアだったんだ。俺たちは国際的な感覚を持ったクラフトワーク・レコードが大好きで、いつもドイツ語や日本語、フランス語といった声を聴いて成長した。そんな感じで曲ができたら、と日本の何人かの友人に話したら、「NENEと彼女のバンドをチェックすべきだ」と勧められたんだ。それから彼女の声を聴いて、これはクールなアイデアだと思った。しかし、それは実際に起こったことのアイデアのひとつにすぎなかった。君たちが聴いた歌は、曲にフィットしていた。彼女は驚くべき、本当にクールなボーカルだよ。
エド:国際的な感覚か、非常にうまい説明だな。
日本語の歌詞の内容は理解している?
エド:うーん、実は、彼女が何を歌っているのか確かではない。日本の友人達にNENEのボーカルの動画を送ったら、「すべて壊れている」という反応が返ってきたが、違う内容の翻訳だった。だから、まだ確かではないんだ。NENEに会って意味を聞いてみるつもりだ。でも、実際、俺たちには確かにアピールするものがある。それは、人々が理解している言葉自体の意味が俺たちを傷つけてはいないということだ。彼女のラップは、言葉を知る必要がないほどのパワーがあり、素晴らしい。
JAPAN Forwardではフジロックフェスティバル2019の情報を随時お伝えします。