富士山で大規模な噴火が起きると、首都圏は大量の火山灰に見舞われる恐れがある。その被害を減らすための基本方針を内閣府の検討会が公表した。
Mount Fuji eruption

羽田空港から見える富士山

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富士山で大規模な噴火が起きると、首都圏は大量の火山灰に見舞われる恐れがある。その被害を減らすための基本方針を内閣府の検討会が公表した。

富士山は過去に噴火を繰り返してきた活火山である。300年以上も噴火がないため忘れがちだが、いずれ噴火する。その認識をしっかり持ち、防災につなげることが大切だ。

検討会は江戸時代に起きた最大規模の宝永噴火を想定し、東京都心など広い範囲で3センチ以上、富士山に近い地域で30センチ以上の降灰を見込んだ。

降灰は微量でも鉄道の運行が止まる。3センチ以上で雨が降ると道路は四輪駆動車しか走行できなくなり、交通網はまひする。空港の閉鎖や停電、通信障害、断水などの恐れもあり、社会経済に甚大な影響が及ぶ。

首都機能を早期に復旧させることが国家的な課題になる。現時点で噴火が切迫しているわけではないが、国や自治体、企業などは十分な対策を整えなくてはならない。

日が沈み、赤く染まる空と富士山(鴨志田拓海撮影)

道路などに積もった火山灰を速やかに除去し、交通と物流を早く回復させることは特に重要だ。そのためには除去した火山灰を仮置きする場所を確保しておく必要がある。自治体は候補地の選定を急いでほしい。

火山灰を効率よく除去する技術の開発も求められる。廃棄が必要な火山灰は東京ドーム400杯分にも及ぶ。その最終的な処分方法も検討しておく必要がある。

住宅は30センチ未満の降灰なら倒壊しないため、要支援者を除いて多くの住民は避難せず、自宅で生活を続けることが基本になる。落ち着いて行動したい。水や食料などの備蓄は首都直下地震の備えと同じ1週間分かそれ以上が望ましいという。

大規模な噴火がいつ起きるのか予測するのは困難だ。国は噴火後、降灰の量や分布を速やかに予測し、情報を分かりやすく発信してほしい。

日本は地震だけでなく火山の噴火が多発する国でもある。大規模な噴火はめったに起きないが、対策を後回しにせず地震や水害などの備えと組み合わせて着実に進めたい。

東京のような近代的な大都市が大規模噴火で被災したケースは世界でも例がない。減災が奏功すれば、世界の噴火対策にも役立つだろう。

2025年3月24日付産経新聞【主張】を転載しています

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