
外国人労働者(AI生成画像)
This post is also available in: English
昨年12月に上梓した拙著『難民に冷たい国?ニッポン』は、「国籍も違う、身につけた言葉や文化も違う、肌や瞳の色も違う人々が、同じ社会で、どのように力を合わせ、共に豊かに暮らしていくか」という問題意識から出発し、日本人だけではなく、外国人労働者(外国人材)や留学生、さらに難民を同じこの社会の一員として捉えようとしている。
第2回目は、その外国人労働者が日本で働くために必要な在留資格のうち、「特定技能」と「技能実習」、そして「育成就労」について記す。
230万人を超える「働く外国人」
厚生労働省の2025年1月31日によれば、日本で就労している外国人労働者の数は、2024年10月末現在の統計で2,302,587人だった。これは前年比で25万人増加したことになる。雇用する事業所は34万カ所で、こちらも前年より2万カ所増加した。
また、国籍別では、ベトナムが最も多く57万人(外国人労働者数全体の24.8%)、次は中国40万人(同17.8%)、フィリピン24万人(同10.7%)と発表された。
「外国人材」に必要なもの
政府は2019年4月、法務省の内部部局であった入国管理局を改組して、新たに出入国在留管理庁(Immigration Services Agency)を設置した。日本は、「外国人材」受け入れの拡大に大きく舵を切った。在留資格に「特定技能」が創設され、すでに5年が経過している。
受け入れた外国人と地域の人々との共生のためのしくみも策定された。まずは受入れ環境の整備と充実だ。生活や就労、日本語教育など、即在留に必要不可欠なもので、その課題に対応するため充実を図っている。これは毎年(2022年度から26年度)見直し改定される。外国人との共生社会のビジョン、 その実現に向けた中長期的な課題・施策を示している。
入管法上の在留資格としては、短期滞在者(観光客など)、留学生、技能実習生、日本人の配偶者等、就労目的(専門的・技術的分野)など28個が定められたが、そこに、29個目の在留資格として「特定技能」が19年より追加された。これは政府の基本方針に基づく新たなものであり、介護、建設、製造、農業、食品製造など現在は16分野ごとの運用方針が示されている。
「特定技能」資格の新設
「特定技能」という在留資格は、人手不足を前提としたものである。本人に求める「専門的・技術的な能力」という点ではこれまでのような学歴・職歴に関する基準は定められているものの、日本語能力や技能に関してはいくらか下げられていると思う。
その一方で、最大5年間の滞在中における支援を受けられることを要件としている(狭義の支援)。具体的には、政府は、生活オリエンテーション、生活のための日本語取得の支援、外国人からの相談・苦情対応、外国人と日本人との交流の促進にかかる支援を行う。また仕事の移転については、同業界内であれば転職が可能とされているので、転職する際にハローワーク(公共職業紹介所)を利用する方法など適切に職業相談・紹介を実施する。
「特定技能」資格を取得した外国人材が日本に滞在中に路頭に迷うことのないよう最大限の支援を行うことが求められている。なによりも基礎的な日本語の習得を進めることが大切となる。

技能実習から育成就労へ
「技能実習」は、日本の技能・技術など、または知識を現場で習得し、主として開発途上国への技能移転を目的としている。各国の経済発展を担う人づくりに貢献するという国際協力を推進する施策だ。現在、この資格で約41万人が在留している。残念なことに、国内の事業主の中には、人手不足による非熟練労働者の確保を主目的として受け入れた後にトラブルに発展する例が後を絶たず、ハラスメントや賃金、労働環境などさまざまな問題が生じてしまっていた。
山積する問題を解決するため、24年3月、「技能実習」を発展的に解消し、目的をこれまでの国際貢献から、日本の産業発展のために外国人材を育成・確保することとして、名称も「育成就労」とした。2027年までに施行される予定となっている。
この制度では、外国人が3年間の育成期間を通じて必要なスキルを習得し、「特定技能」1号の水準に到達することを目指している。現状の労働力不足を背景に、日本国内の人材育成に重点を置く形で再編される予定だ。施行後も、現行の「技能実習」からのスムーズな移行を目的として、約3年間の移行期間が設けられている。この期間中は、「技能実習」も引き続き利用できるため、外国人労働者と受け入れ企業が徐々に新制度に適応できるように配慮されている。2030年頃には、「技能実習」から完全に移行し、「育成就労」へ一本化が完了する見通しとなっている。
進む共生や受入環境の整備
さらに、政府は、外国人との共生社会の実現、あるいは外国人材受入環境の整備という点で各種の施策が盛り込まれた総合的対応策を導入した。この対応策は、「特定技能」だけではなく、日本で合法的に在留し日常生活・社会生活・職業生活を営んでいるあらゆる在留外国人を対象としたものとなっている。

筆者:柳瀬房子(認定NPO法人、難民を助ける会前名誉会長)
■柳瀬房子(やなせ・ふさこ) 認定NPO法人、難民を助ける会前名誉会長。青山学院大学大学院総合文化政策学研究科修士課程修了。1979年にインドシナ難民を助ける会(現難民を助ける会)の設立準備に関わり、翌年、30歳で事務局長に就任。以来、半世紀近く日本の難民支援の草分けとして活動。2023年に退任後も、法務省難民審査参与員として尽力する。2024年12月に出版した『難民に冷たい国?ニッポン』(慶應義塾大学出版会)のほか、日本絵本賞読者賞を受賞した『サニーのおねがい 地雷ではなく花をください』(絵:葉祥明、自由国民社)など著書多数。
This post is also available in: English