国会が会期末を迎えた。イスラエルとイランの交戦に関し、国会は予算委員会や外交防衛関係の委員会で集中的に審議していない。国会会期を小幅延長してでも、日本と国民に必要な議論をすべきではないのか。
Noda and Ishiba shake hands 2

衆院本会議後、立憲民主党の野田佳彦代表(右)への挨拶で握手する石破茂首相=6月20日午後、国会内(春名中撮影)

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与野党は、日本にも深く影響する中東危機を通常国会で論じることなく、7月参院選の選挙運動を優先して閉じてしまうのか。

国会は6月22日に会期末を迎えた。立憲民主党の野田佳彦代表は19日、内閣不信任決議案の提出見送りを表明した。与野党の関心は参院選に向かっている。

だが、それでいいのか。イスラエルとイランの交戦に関し、国会は予算委員会や外交防衛関係の委員会で集中的に審議していない。国会会期を小幅延長してでも、日本と国民に必要な議論をすべきではないのか。

イランのアラグチ外相(ロイター=共同)

日本は原油の9割を中東に依存している。安全保障やエネルギー安保、経済への影響は甚だ大きい。中東方面に米軍が出動しているが、その間隙(かんげき)を突いて北東アジアで中国が軍事的圧迫を強める恐れもある。

野田氏は不信任案見送りについて、日米関税交渉や中東情勢のため「政治空白をつくるべきではない」と語った。重要な問題というなら、なぜ会期延長と国会審議を求めなかったのか。石破茂首相もそうである。中東情勢に関し国民の代表と質疑を交わすつもりはないのか。

国会は先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首相報告とそれへの代表質問も行っていない。政府も与野党も何を考えているのか。極めて残念だ。

今国会はほかにも多くの課題が残った。安定的な皇位継承に向けた皇族数確保をめぐっては、衆参正副議長の取りまとめが見送られた。男系継承という最重要原則を踏まえた立法府の総意形成が急がれる。

日本学士院賞受賞者や新会員らにお言葉を述べられる天皇陛下と皇后さま、長女の敬宮愛子さま、秋篠宮ご夫妻=6月10日午後、皇居・宮殿「連翠」(代表撮影)

憲法改正では、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などの5党派が、緊急時の国会議員任期延長を可能にする憲法改正骨子案を衆院憲法審査会の幹事会に示したのはよかった。だが、自民が改憲原案を作成する条文起草委員会の設置を提案したことに対し、立民が拒否したのは問題だ。

物価高対策の議論は活発だったが、各党が給付金や消費税減税など参院選をにらみ人気取りに走ったのはいただけない。一方で中国軍機が海上自衛隊の哨戒機に異常接近する事態が起きても、対中認識や抑止力向上の議論は十分ではなかった。

海上自衛隊の哨戒機P3Cに異常接近する中国軍のJ15戦闘機=6月8日、太平洋上(防衛省提供)

年金制度改革法は成立したが基礎年金底上げの議論が深まらなかったのも残念だった。

2025年6月21日付産経新聞【主張】を転載しています

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