リチウムイオン電池の発火事故が増加中だ。消費者庁と環境省などが利用者や自治体に注意するよう呼びかけている。
Lithium-ion batteries

処分に困るリチウムイオン電池を使った製品の数々(画像はイメージです)

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ノートパソコンやスマートフォンから電動自転車などまで身の回りの多様な製品に使われるリチウム(Li)イオン電池の発火事故が増加中だ。

火災に至る例も少なくない。消費者庁と環境省などが利用者や自治体に注意するよう呼びかけている。

軽量で高性能、かつ繰り返し充電可能なリチウムイオン電池は、化石燃料に依存しない社会を支える画期的な技術としてノーベル化学賞に輝いた発明だ。暮らしに欠かせず、資源として再利用できる電源だが、利便性の裏には危険性も潜んでいる。その両面性を認識し、安全な利用を心がけたい。

まず、リチウムイオン電池は、熱に弱いことを知っておきたい。炎天下の車内は50度を超えることがある。直射日光が当たるダッシュボードや座席にモバイルバッテリーなどを放置するのは厳禁だ。発熱や膨張などの異常が生じる。

衝撃や圧力も苦手だ。硬い床に落として損傷した場合は、使用を中止すべきだ。リチウムイオン電池には引火性液体の有機溶媒が使われている。

パナソニックの和歌山工場で生産されるEV向け新型電池=和歌山県紀の川市(桑島浩任撮影)

就寝中の充電も見直したい。消費者庁によると枕元で発火した場合にはやけどの恐れだけでなく、寝具に引火して火災の原因になるという。充電が終わったらコンセントからプラグを抜くことも推奨されている。

一方、環境省は今年4月、リチウムイオン電池の分別回収徹底を全国の市区町村に要請している。家庭の一般ごみに混ぜて捨てられることで、収集車やごみ処理施設での圧縮、破砕中に火災が多発しているためだ。

令和4年度の発生は全国で4260件だった。5年度には8543件に倍増している。発火や発煙を含めると2万件を超えるというから、ただごとではない。ごみ処理施設の稼働停止も相次ぐ事態となっている。

リチウムイオン電池は、使用時や充電時だけでなく廃棄に際しても十分な注意深さが求められるのだ。安全性に対する人々の認識は、利用の広がりに追いついていない感がある。

メーカーをはじめ、政府や自治体は、リチウムイオン電池の特性や取り扱い、回収方法に関する情報の発信を一層強化すべきである。利用者の理解を深め、事故を未然に防ぎたい。近年の夏はひときわ暑い。

2025年6月17日付産経新聞【主張】を転載しています

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